画像
ナマコから切り離された断片が、3年間生き続ける。※イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
biology

「切り落とされたナマコ断片」が3年以上生存、”ゾンビ組織”研究が生命観を揺さぶる

2026.05.28 20:00:54 Thursday

切り離された肉片が、何年も生き続ける。

そんなホラー映画のような現象が、実際の海底生物で確認されました。

カナダのニューファンドランドメモリアル大学(MUN)などの研究チームは、ナマコの一種 Psolus fabricii の切断組織が、自然海水中で3年以上にわたり活動を続けたと報告しました。

しかもその組織は、ただ腐らず残っただけではありません。

傷を修復し、初期には細胞分裂や細胞の入れ替わりを示し、海水から栄養を吸収しながら、自らの組織を再編成していたのです。

この発見は、「生きている」とは何かという生命観そのものを揺さぶる可能性があります。

研究の詳細は2026年5月27日付で科学誌『Science Advances』に掲載されました。

Scientists Find Groundbreaking Potential for Tissue Regrowth and Immortality in the Ocean https://www.bigelow.org/news/articles/2026-05-27.html
Natural tissue immortality: Indefinite survival of sea cucumber explants https://doi.org/10.1126/sciadv.aeb1394

切り離されたナマコ組織が「3年間」生き続ける

動物の体から切り離された組織は、普通そのままでは長く生きられません。

体内から切り離されると、血液や体液による酸素や栄養の供給が途絶え、免疫の防御も失われます。

さらに自然環境では、細微生物による分解が始まります。

そのため、切断された組織はやがて壊死し、腐敗していくと考えるのが自然です。

一方で、生物学には「不死化細胞」と呼ばれる有名な例があります。

たとえばヒト由来のHeLa細胞のように、実験室で長く増殖し続ける細胞株は、医学研究に大きく貢献してきました。

しかし、これは基本的に「細胞」を管理された環境で増やす技術です。

では、自然環境で長く生き続ける組織は存在するのでしょうか。

今回、研究チームが注目したのは、棘皮動物に属するナマコです。

棘皮動物にはヒトデやウニも含まれ、腕や内臓などを再生する能力で知られています。

研究の対象となった Psolus fabricii は、冷たい海にすむナマコで、岩などに付着するための管足や、餌を集める触手を持っています。

管足とは、ナマコやヒトデなどに見られる小さな足のような器官で、岩にくっついたり移動したりするために使われます。

これらの部位は自然界でも傷ついたり失われたりしやすく、再生能力を調べるうえで適した組織だと考えられました。

そこで研究チームは、Psolus fabricii の管足、管足がまとまった足裏側の組織、触手、体壁などを切り離し、自然海が流れる環境で観察しました。

ここで重要なのは、実験が無菌培地ではなく、微生物や有機物を含む自然海水中で行われた点です。

つまり、通常の細胞培養とは逆に、微生物や有機物に満ちた自然環境で、組織がどうなるかを調べたことになります。

結果は驚くべきものでした。

管足や管足がまとまった部分、触手の組織片は傷口を閉じ、細胞活動を維持し、長期間生存しました。

正式な1年間の実験に加え、その後の観察でも、管足や管足がまとまった部分の組織片は3年以上にわたって維持されました。

研究者たちは、こうした組織片を living immortal P. fabricii explants、略してLiPfeと呼んでいます。

今回の成果は、「新しいナマコが生まれた」という話ではなく、切り離された複雑な組織が自律的に治癒し、長く維持されたという発見です。

では、その“ゾンビ組織”の内部では何が起きていたのでしょうか。

次ページ傷を治し、免疫を動かし、海水から栄養を吸う組織

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!