死後10時間、摘出したブタ眼球はまだ光に反応した――特注装置で実現
死後10時間、摘出したブタ眼球はまだ光に反応した――特注装置で実現 / Credit:Canva
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死後10時間、摘出したブタ眼球はまだ光に反応した――特注装置で実現

2026.07.13 20:00:34 Monday

私たちの眼球の奥では、「光のセンサー」とも呼べる薄い膜が静かに働いています。

網膜と呼ばれるこの組織は、目に飛び込んできた光を電気信号に変換し、脳へ送り届ける——いわば「光をとらえるセンサー」にあたる部品です。

スペインのゲノム制御センター(CRG)を中心とする国際研究チームが、ブタ眼球の血管に酸素を含む体液に近い液を流し込んだところ、いったん失われた網膜の光応答がよみがえり、死後少なくとも10時間にわたって続くことを確認しました。

これまで、網膜は酸素の途絶にきわめて弱く、血流が止まればわずかな時間で不可逆的に壊れ始めるとされてきました。

さらに研究では、一度は失われた反応が、再び液を流すことで戻り、液の供給を止めると反応が消え、また流し始めると光応答がよみがえるという「スイッチ」のような現象まで確認されています。

著者たちは、この成果は「光への応答が死とともに終わるという通念に挑戦するものだ」と述べています。

研究内容の詳細は2026年6月30日に『bioRxiv』にてプレプリントとして発表されました。

Retinal resuscitation in post-mortem eyes https://doi.org/10.64898/2026.06.25.733416

心臓移植のように眼球も丸ごと移植できないのか?

心臓移植のように眼球も丸ごと移植できないのか?
心臓移植のように眼球も丸ごと移植できないのか? / Credit:Canva

世界保健機関(WHO)の推計によれば、世界で22億人以上が何らかの視覚障害を抱えています。

加齢にともなう黄斑の変性、糖尿病による網膜の損傷、遺伝性の疾患——原因はさまざまですが、こうした網膜変性疾患の多くでは、現在の医療にできるのは進行を遅らせることが中心で、いったん失われた視力を取り戻す確実な方法は、まだ限られています。

しかし心臓も腎臓も肝臓も移植できる時代に、なぜ眼球だけは、丸ごと移植しても視力を取り戻せないのでしょうか?

理由は大きく二つあります。

一つ目は、網膜がとてつもなく「繊細」であること。

網膜は実は脳や脊髄と同じ中枢神経の一部であり、酸素の途絶に極端に弱いのです。

他の臓器ならクーラーボックスで冷やして数時間運ぶことができますが、網膜はそれだけでは十分に保てません。

冷蔵保存しても、24時間後には構造が崩れ、細胞の生存率も大きく落ちてしまうことが知られていました。

二つ目は、眼球と脳をつなぐ「通信ケーブル」の問題です。

視神経と呼ばれるこのケーブルは、一度切断されると、自然にはほとんど再生しません。

仮に眼球を完璧な状態で「運べた」としても、ケーブルがつながらなければ映像は脳に届かないままです。

2023年には、世界で初めて顔面の一部とともに眼球をまるごと移植する手術が行われ、その1年後に経過が報告されました。

眼球は生着し、血流も保たれ、網膜にも血液が通りました。

移植した眼にを当てると、脳の視覚中枢が反応する可能性を示す信号は得られました。

こうした課題を背景に、今回の研究チームは眼球に血液を届ける血管(眼動脈)に細い管を差し込み、体液に近い成分をもつ液に酸素を溶かした溶液を、流量や圧力を調整しながら送り込む専用装置を開発しました。

圧力や流量はセンサーで自動調整され、網膜の状態をリアルタイムで観察できる窓も備わっています。

この装置を使うことで、繊細な網膜の機能を失わずにいられる時間を伸ばせるかを試しました。

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