「三人称視点」で対立は減るが、共感も少し弱まる
今回の研究で特に興味深いのは、三人称視点の参加者が、単に冷静になっただけではない点です。
議論後、研究チームは各参加者に、他のメンバーが最終的にどのような意見を持っていたと思うかを尋ねました。
その結果、三人称視点の参加者は、一人称視点の参加者よりも他者の最終意見を正確に推測できていました。
つまり、自分を少し離れた場所から見ることで、自分の主張だけに入り込みすぎず、相手の意見を把握しやすくなった可能性があります。
さらに、グループ内の葛藤も低下しました。
研究では、価値観の違いや対人関係の軋轢を示す「関係葛藤」と、意見の対立を示す「課題葛藤」の両方が調べられました。
その結果、どちらの葛藤も一人称視点より小さくなっていました。
インタビューでも、一人称視点の参加者からは、対立についてのコメントが多く寄せられたのに対し、三人称視点の参加者からは妥協点の模索や意見のすり合わせに関するコメントが多く見られました。
加えて、三人称視点の参加者は、グループのコンセンサスに対して、自分の最終意見も一致していると答える傾向が高まりました。
これは、単に場の空気に流されて合意したのではなく、最終的な結論に本人も納得していたことを示しています。
ただし、良いことばかりではありません。
三人称視点では、グループ内の感情の相互依存性が低下していました。
これは、自己と他者の間で感情や態度がどれくらい影響し合ったと感じたかを示す指標です。
つまり、相手の意見は把握しやすくなった一方で、相手の感情には巻き込まれにくくなっていたのです。
インタビューでも、三人称視点の参加者からは、相手の感情が分かりにくかったことや、感情よりも議事進行を優先したことに関するコメントが多く見られました。
そのため研究チームは、三人称視点は対立が生じやすい局面では有効である一方、共感や傾聴が重視される局面には適さない可能性があると考えています。
たとえば、経営会議や部門間の利害調整のように、感情的対立を抑えて合意形成する場面では役立つかもしれません。
一方で、メンタルヘルス面談やカウンセリング、チームビルディングのように、感情的な近さが重要な場面では注意が必要です。
研究チームは将来的に、議論の状況に応じて視点を切り替える仕組みが有効ではないかと提案しています。
議論が加熱したときには三人称視点で冷静さを促し、共感や参加感が必要なときには一人称視点に戻すというわけです。
この研究は、VR技術に更なる可能性とメリットがあることを教えてくれました。
VRで自分を少し離れた場所から見ることは、状況を正確に理解するための有効な手段なのかもしれません。
























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