画像
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
history archeology

古代エジプトの技術で「現代人をミイラ化」した実験

2026.07.19 21:00:22 Sunday

包帯に巻かれ、数千年もの時を超えて残る古代エジプトのミイラ。

その姿は世界中の人々に知られていますが、古代のミイラ職人たちが遺体をどのような手順で処理していたのかについては、意外なほど詳しい記録が残されていませんでした。

そこで1994年、エジプト学者と解剖学者が、科学研究のために提供された現代人の遺体を使い、古代エジプトのミイラ製作を再現するという異例の実験に挑戦。

古代の道具を模した刃物を使い、鼻から脳を取り出し、天然の塩類であるナトロンを大量にかぶせて遺体を乾燥させたのです。

すると、わずか5週間後には、遺体が古代エジプトのファラオを思わせる姿へと変化しました。

この実験は、ミイラ特有の外見が生まれる仕組みだけでなく、脳の取り出し方や、内臓を保存用の壺に入れられた理由など、長年の疑問を解く手がかりになりました。

一方で、献体された遺体をこのような実験に使用することの是非をめぐり、強い批判も起きています。

‘He looked like Ramses the Great’: How experimental archaeologists used ancient techniques to mummify a modern-day person https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/he-looked-like-ramses-the-great-how-experimental-archaeologists-used-ancient-techniques-to-mummify-a-modern-day-person They mummified a modern human with ancient tools. It got messy. https://www.nationalgeographic.com/history/article/sam-kean-book-dinner-with-king-tut-modern-mummy-ancient-egypt

古代エジプトの方法で、現代人の遺体をミイラ化

実験を行ったのは、エジプト学者のボブ・ブライアー(Bob Brier)と、解剖学者のロン・ウェイド(Ronn Wade)です。

ウェイドはベトナム戦争で衛生兵として勤務した後に解剖学者となり、米メリーランド州の解剖委員会で責任者を務めていました。

一方のブライアーは解剖学の訓練も受けていましたが、主な専門は古代エジプトでした。

2人が実験に使用したのは、米国ボルティモアで科学研究のために献体された、心臓発作で亡くなった76歳の男性です。

男性の詳しい身元は公表されていません。

ウェイドは英語の「embalm」、つまり「遺体に防腐処理を施す」という言葉にかけて、男性を「E・M・バーム」と呼んでいました。

ミイラ化実験に関する一連の画像はこちらからご覧いただけます

2人はできる限り古代の方法を再現するため、ファラオ時代の道具や材料を模した品を準備しました。

使用したのは、亜麻布の包帯、幅の広い木製の作業台、銅や黒曜石で作った刃物などです。

ただし銅製の刃物は遺体の組織をうまく切れなかったため、実験の早い段階で使用を断念しました。

本番を始める前には、鼻から脳を取り出す方法も練習しています。

古代エジプトの防腐処理師は、鼻の穴から鉤状の棒を差し込み、脳を除去していたと考えられています。

しかし、詳しい手順までは記録されていませんでした。

2人は最初、棒を使って脳組織を直接すくい出そうとしました。

ところが、脳は非常に柔らかいため、棒に引っかけて取り出すことができませんでした。

そこで鼻から水を注ぎ、棒を使って脳組織をかき混ぜ、液状にする方法を試しました。

すると液状になった脳組織を、鼻から流し出すことができたのです。

これは、文献に残された簡単な記述だけでは分からなかった、具体的な作業方法を再現した重要な成果でした。

次ページ大量のナトロンで遺体から水分を抜く

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

歴史・考古学のニュースhistory archeology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!