80年代に流行した「サケ帽子」ファッション
シャチは自然界の中でも非常に賢い動物です。
その高い知能やコミュニケーション能力、複雑な社会構造から、シャチはしばしな私たち人間と奇妙な類似を示すことがあります。
例えば、シャチは小さな群れで堅固な社会を作っているので、他の群れと出くわしても言葉を交わすこともなければ、特に交流することもありません。
また住む海域によって食べるものも違い、アザラシなどの海洋哺乳類を食べることもあれば、サケだけを食べるグループもあります。
私たちも街中ですれ違う他の家族といちいち交流はしませんし、食文化も地域ごとにまったく違いますよね。
このようにシャチには人間に近い習性がたくさんありますが、中でも最も面白く、かつ不可解なものの一つが80年代に流行した「サケ帽子ファッション」です。
この流行は1987年の夏に、米国ワシントン州の西海岸沖にあたる「サウス・プジェット・サウンド(South Puget Sound)」という海域に棲みつくシャチの一群においてのみ見られました。
最初はメスのシャチが死んだサケを頭の上に乗せ始めたのが目撃され、その奇妙な光景が瞬く間に他の仲間へと伝播していったのです。
サケ帽子の流行は約5〜6週間ほど続いた後にパッタリとなくなりました。
80年代当時は調査機器もまだ充実していなかったため、シャチがなぜこのような行動を取ったのか、詳しいことは解明できずじまいでした。
それ以来、サケ帽子ファッションはほぼ目撃例がなく、40年近くもの間、海洋生物学者たちを悩ませ続けています。
ところが2024年の10月末に、アメリカ西海岸沖で再びサケ帽子の流行が見られ始めたのです。