細菌の集団は生き残るために「脱出ポッド」を放出することができる
細菌の集団は生き残るために「脱出ポッド」を放出することができる / Credit: Chou et al., Nature Microbiology (2026)
biology

細菌たちは生き残るために「脱出ポッド」を放出できる――射出装置の正体は納豆のネバネバ (3/3)

2026.07.18 20:00:51 Saturday

前ページ細菌たちは脱出ポッドを打ち出し生き残ろうとする

<

1

2

3

>

脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている

脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている
脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている / Credit:Canva

実のところ、チームが数ある物質のなかから納豆のネバネバ(γ-PGA)に目をつけられたのには、理由がありました。

手本があったのです。

クラゲです。

クラゲに刺されると痛いのは、触手の表面に、顕微鏡でしか見えない発射装置がびっしり埋まっているからです。

中には毒針が、きつくきつく巻きこまれています。

その発射装置に詰まっていたものが、同じネバネバ成分のγ-PGAでした。

旅支度をすませた細胞が糸を吐いていると分かったとき、チームの頭にはすでに、この毒針が浮かんでいたのです。

だとすれば細も、同じ物質で似たようなことをやっているのではないか——そう見当をつけて確かめにいった結果が、あの「脱出」でした。

クラゲの場合、カプセルの中は酸っぱい水で満たされています。

この状態だと、糸は互いにぴったり寄り添い、小さく畳まれたままでいられます。

ところが引き金が引かれて水が流れこみ、酸っぱさが薄まると、糸の一本一本が磁石のように反発しはじめます。

同じ極を近づけたときの、あの押し返す感じです。

糸はいっせいに離れようとし、同時に水を吸ってふくれあがり、その力が毒針を叩き出すのです。

チームは、この理屈をそのまま細菌で試しました。

糸を多めに作るようにした要塞に流す水を、酸っぱい水とふつうの水で交互に切り替えたのです。

結果、要塞は予想どおりに、呼吸するように伸び縮みしました。

細菌の糸は、クラゲの糸と同じ電気の理屈で動いていたのです。

クラゲと細菌は、生き物の家系図をたどると、途方もなく遠い親戚です。

共通の先祖にたどり着くには、気が遠くなるほど遡らなければなりません。

それでも両者は、同じ糸にたどり着きました。

片方は毒針を撃つために。

もう片方は、仲間を撃つために。

次に納豆の蓋を開けたとき、箸から伸びるあの糸を、少しだけ長く眺めてみてください。

条件がほんの少し違えば、同じ糸がクラゲの毒針を撃ち、細菌の脱出ポッドを飛ばすのですから。

<

1

2

3

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!