不遇感は「優しさ」を軽視させず、「役立つ能力」を上乗せする
研究1では、相対的剥奪感が強い学生ほど、他者を自分の目的に役立つ存在として見る傾向が高く、年齢や性別を考慮しても関連は残りました。
ただし、これは質問紙による相関研究なので、どちらが原因かまでは判断できません。
研究2で両者の間を詳しく分析すると、交換志向が心理的な橋渡し役になっていました。
つまり、自分が周囲より恵まれていないと感じる人ほど、人間関係で与えたものと受け取るものの釣り合いを意識し、その傾向が他者をモノのように扱う「客体化」と結びついていたのです。
この経路は、調査した性格特性や権力欲求、年齢、性別、教育、収入を考慮した後も確認されました。
さらにSFシナリオにおける研究3では、地位の高い住民と比較した参加者の方が、低い住民と比較した参加者より強い剥奪感を報告し、交換志向も高くなりました。
また、友人候補の「飛行能力」をより重要だと評価しましたが、優しさ、面白い性格、価値観の共有については、条件間に明確な差がありませんでした。
つまり、剥奪感によって相手の人柄を軽視したというより、人柄への評価は保ったまま、「この人は自分の役に立つか」という実用性への関心が強まったと考えられます。
研究者たちは、周囲より不利だという感覚が、自分の利益や公平な見返りへの注意を高め、人間関係を交換として捉えやすくした可能性があると説明しています。
ただし、いくつかの限界があります。
研究には自己申告式の質問と架空の場面が使われており、現実の対人行動を直接観察したわけではありません。
また、参加者はすべて中国で集められ、主に若い成人だったため、異なる文化や世代にも同じ結果が当てはまるかは今後の検証が必要です。
それでも今回の結果は、他者を利用価値で見る傾向が、調査した性格特性だけでなく、「自分だけが割を食っている」という主観的な不公平感とも結びつく可能性を示しています。
人とのつながりを損得だけの関係にしないためには、助け合いを求めるだけでなく、まず「公平に扱われている」と感じられる環境が重要なのかもしれません。





























