子育ての「効き目」に目立った貧富の差はなかった

では、同じ質の子育てをしたとき、返ってくるものは家庭によって違うのでしょうか。裕福な家には本があり、静かな勉強部屋があります。同じ接し方でも、そちらのほうが実りが大きいのではないか——そう考えるのは自然なことです。
ヴェラ氏はこの点も確かめました。
三つの要素(親自身の頭の良さや性格・子育てスタイル・一緒に過ごす時間)が、子どもの知能とどれほど効率よく結びつくのか。その効率を、恵まれている場合と厳しい場合で比べたのです。
結果、はっきりした差は見つかりませんでした。
同じだけ関われば、同じだけ返ってくる。少なくとも今回の分析では、家庭の豊かさによって“効き目”が変わるという証拠は見つからなかったのです。(※統計的には0.097標準偏差がみられましたが、極めて小さいと言えます)
さらに知能に寄与する「一緒に過ごす時間」についても、興味深い結果が得られました。
ただこの研究で「一緒に過ごす時間」として記録されたのは、時計で測った滞在時間ではありません。次の五つを、どのくらいの頻度でしているかという記録です。
・歌う、楽器を演奏する
・本を読む、本について話す
・スポーツをする
・散歩や日帰りの外出をする
・劇場や美術館に行く
どれも高所得層でなければ無理というものではないのが重要です。
結果、この一緒に過ごす頻度は、低所得そのものよりも、親の学歴とのほうがはっきり結びついていました。
学歴が収入に関連しているのは知られていますが、現実には低学歴でも高収入な家や、高学歴でも低収入な家があります。
研究では所得と学歴を分けても分析しましたが、一緒に過ごす頻度とより明確に関連していたのは、親の学歴のほうでした。
つまり、世帯収入だけで親子の過ごし方が決まるわけではなく、親子で一緒に活動する頻度は、子どもの知能の高さと結びついていたのです。
「質の高い子育て」という言葉には、どこか費用のかさむものだという思い込みがあるでしょう。
しかし子育てスタイルや一緒に過ごす時間といった知能に関連する要素は、単なる収入によって支配されてしまうものではありませんでした。

































