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ADHDがやたら問題にされるのは「社会が要求する注意力」が変化したから (2/2)

2026.08.29 12:00:13 Saturday

前ページ人々の注意特性に変化がなくても、社会の求める注意力は変化している

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「集中できない」が問題になりやすい社会になった可能性

スマートフォンやSNS、短い動画などに触れる現代生活では、注意が頻繁に中断され、別の情報へ素早く切り替える機会が増えています。

今回レビューされた研究では、講義中にテキストメッセージで集中を中断された学生は内容の記憶成績が低下し、別の研究では、スマートフォンの電源を切るだけでも注意に使える認知資源が減ることが示されています。

また、デジタルメディアを使いながら複数の情報を行き来する行動は、注意のコントロールの低下や気の散りやすさと関連していました。

仕事や教育そのものもデジタル化し、メール、メッセージ、複数の課題を頻繁に切り替えながら処理する場面が増えています。

研究者らは、こうした環境では1つの課題に深く集中する状態に入りにくくなり、課題の完了や目標達成が妨げられる可能性があるとしています。

レビューが示しているのは、デジタル環境、もともとの神経発達上の個人差、そして学校や職場で求められることが相互に作用し、注意の困難が表面化しやすくなっているという可能性です。

頻繁な通知は注意力の維持を難しくしますが、仕事等の通知の場合は、これを大量に放置したり対処を忘れていたりすれば仕事の進行に支障を来すことになります。結果としてこれまでは問題のなかったレベルの不注意でも、日常生活を困難にするADHDの特性として表面化しやすくなったと考えられるのです。

今回の研究者らはさらに、ADHDの診断数が増えているだけでなく、治療薬がそれを上回るペースで消費されているという点にも着目しています。

ここで注目されているのが、ADHDではない人が、勉強や仕事での集中力向上を期待して処方薬などを非医療的に使用するケースが報告されていることです。

調査では、こうした薬を使う理由として77~78%が「注意・集中力の向上」、61~65%が勉強、49~55%が持久力向上、45~50%が疲労軽減を挙げていました。

もちろんADHDでない人が、ADHD治療薬を使っても集中力が上がるというわけではありませんが、それを期待してネットなどを通じてADHD治療薬を求める人が増えているという事実は、学業や仕事で高い認知パフォーマンスや生産性を求められているケースが多い可能性を示していると、研究者らは指摘しています。

ただし、今回紹介した論文は関連研究を体系的に集めたメタ解析ではなく、現在の仮説や論点を整理したナラティブレビューと呼ばれるものです。

そのため、現代のデジタル環境や社会的要求がADHD診断の増加に関連することを証明したわけではなく、各要因がどの程度影響しているのかも分かりません。

ただADHD診断数の増加はADHDという症状の存在を知ったから、というだけでなく、ひょっとして自分はADHDなのかも知れないと感じる何らかの困難があったためだと推測できます。

社会環境の変化で、これまで見逃されていたような軽度のADHD傾向でも、本人や周りが実害を感じるようになったというのは納得感のある説明です。

今回のレビューの興味深い点は、ADHD診断の増加を考えるとき、人間の側の注意特性でなく、「どのような注意力を社会が要求しているのか」という環境の側に目を向ける視点を提供した事でしょう。

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