卵巣にある「温度センサー」が精巣の遺伝子を動かす

湯加減にうるさいのは、人間だけではなさそうだ。
研究チームが目を付けたのは、Trpv4(ティーアールピーブイフォー=暖かさで働きが強まる、細胞の膜にある小さな通り道)というタンパク質です。
温度と性の決まり方をつなぐ候補として、以前から名前が挙がっていた分子です。
タウナギでは、この遺伝子は生殖腺でよく働き、卵巣より精巣で多く見つかりました。
取り出した卵巣の組織を暖める。すると4時間後には、もうこの遺伝子が増え始めていました。
細胞の中のカルシウムの信号も、暖かいほうで大きく増えました。
生きた魚でも、涼しい水から暖かい水に移すと、卵巣のこの遺伝子は翌日には増え、日を追って上がり続けました。
では、それが本当に精巣づくりの引き金なのでしょうか。
研究チームがメスの卵巣に注射したのは、この通り道を開く薬と、閉じる薬。
涼しい水にいる魚でも、開く薬を入れると、精巣づくりに関わる遺伝子が暖かい水と同じくらい増えました。
暖かい水の魚に閉じる薬を入れると、暖かさによる増加は止まりました。
通り道が開くと細胞の中で合図が伝わり、精巣づくりの遺伝子のスイッチが入る、という筋道を研究チームは提案しています。
ただし半年の実験で見えたのは、卵巣が精巣へ変わり始めた段階までです。
性別が変わるきっかけの一つは、水の温かさにあるかもしれない。この魚については、そんな見方が加わりました。
オスへの近道は、ぬるま湯にあったようです。

























