名札のもとをためておく「倉庫」は腎臓にあった

くずれにくさの理由は、おしっこが外に出たあとと、猫の体の中の両方にありました。
まずは外に出たあとです。
おしっこのにおいのもとになる揮発性(蒸発しやすい性質)の物質の多くは、おしっこが残されるとすぐに変わりはじめます。
これに対してBFAは「半揮発性」で、ほかの物質よりもゆっくりと蒸発します。
おしっこをしみこませたものを25℃に置いた実験では、猫ごとのBFAの配合が少なくとも24時間は比較的安定していました。
におい全体が変わっていくなかでも、BFAの配合は比較的そのまま残りやすいのです。
次は体の中です。
研究チームがBFAの出どころをたどると、行き着いたのは腎臓でした。
腎臓は、おしっこを作る臓器です。
その外側の層(腎皮質)には、トリアシルグリセロールという脂肪をたっぷり含んだ小さなあぶらのつぶ(脂肪滴)があり、BFAはここにたくわえられていました。
この「倉庫」が短い期間のゆれをやわらげ、毎回似た配合のおしっこが出るのを支えていると考えられます。
大きな鍋いっぱいのスープに少し水を足しても、味がほとんど変わらないのに似ています。
イエネコでは、腎臓という臓器がにおいの個性を安定させていたことになります。
研究チームは、ほかのネコ科の動物のおしっこや腎臓も比べています。
その結果、BFAに関わる特徴はネコ科に広く見られましたが、どの仲間でも同じというわけではありませんでした。
BFAの顔ぶれがどれだけ多彩か、そしてそれをどうたくわえているかは、ネコ科の中のグループによってさまざまだったのです。
においは消えていくものと思いがちですが、イエネコは腎臓にためた材料で、変わりにくい「名札」を作っているようです。



























