幻覚剤を使った脳で「上りの信号」はどうなっていた?

研究チームは、人とマウスの4つのデータを使って、MDMA、シロシビン、LSDの効果を調べました。
薬と対照を比べた組み合わせは、全部で9つです。
まず分析したのは、MDMAを飲んだ14人のボランティアの脳を、機能的MRI(血流の変化から脳の活動を測る装置)で撮った研究です。
MDMAを飲んだ後の画像を、偽薬を飲んだ後や何も飲まなかった後の画像と比べました。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(タコに幻覚剤「MDMA」を与えた結果、驚きの現象が判明)
すると、MDMAはDMNの中を動く脳の波の大きさを全体として弱めていました。
さらに、DMNへ上ってくるボトムアップの信号の割合も減っていたのです。
次に調べたのは、シロシビンを飲んだ6人の研究です。
ここでは、シロシビンを飲んだ時の画像を、2種類の画像と比べました。基準となる画像と、刺激薬のメチルフェニデートを使った「効き目のある偽薬」の時の画像です。
メチルフェニデートは、幻覚は起こさずに、シロシビンによる体の高ぶりに似た状態を作る薬です。
その結果、シロシビンでもDMNを動く波の大きさは弱まっていました。
ボトムアップの向きの減少も見られましたが、こちらは統計的に意味のある差にはなりませんでした。
研究チームは、シロシビンの効果が数日残ったため、薬の直後に撮った基準の画像が変わってしまったのではないかと考えています。
3つ目は、LSDを点滴で受けた18人の研究です。
生理食塩水の点滴と比べると、LSDも波の大きさと、DMNへ入るボトムアップの信号の割合の両方を減らしていました。
ただ、ここまでは人のMRIの結果で、ほかの動物や測り方でも同じことが起きるかは確かめる必要があります。
そこで研究チームは、14匹のマウスの研究も調べました。
マウスでは、脳細胞の活動を直接、高い解像度で記録できる「広視野カルシウムイメージング」が使われました。
マウスには、LSD、鎮静薬のジアゼパム、別の鎮静薬のデクスメデトミジンが与えられました。
その結果、LSDを受けたマウスでも、人と同じようにDMNの活動の波の大きさとボトムアップの流れが減っていました。
抗不安薬のジアゼパムもボトムアップの信号を減らしましたが、その程度はLSDより小さいものでした。
一方のデクスメデトミジンは正反対で、DMNへ入るボトムアップの信号の割合を増やしました。
このマウスの結果から、この手法が血流の見かけの変化ではなく、神経細胞の実際の活動の変化をとらえていることも確かめられました。
また、この信号の弱まりは、データの質や、これまでに知られていた幻覚剤の効果では説明できないことも示されました。
薬の種類や動物、測り方が違っても、感覚から「自分を考える脳」へ上る信号の流れが弱まる様子がくり返し見られたのです。





















