信号の変化は、心の体験とどう結びついていたのか

研究チームは、こうした信号の流れの変化が、人が感じた体験と関係しているかどうかも調べました。
要旨によると、この弱まりは、参加者自身が報告した体験と独自に結びついていました。
MDMAの研究では、ボトムアップ処理が最も大きく減った人ほど、自分をコントロールできない感覚を強く報告していました。
そうした人は、「自我の溶解」への恐れもより強く報告していました。
自我の溶解とは自分という感覚が失われることで、ここではそれに対する怖れの反応を指しています。
ただし、これは関連を示したもので、信号の弱まりが怖さを生んだと確かめられたわけではありません。
研究チームは、ボトムアップの流れを抑えすぎると、幻覚剤で時に起こる嫌な体験の引き金になりうると考えています。
ボトムアップ処理は、ふだん私たちを、今いる周りの感覚の世界につなぎとめています。
このつなぎとめる入力が大きく落ちると、人は周りから切り離されたように感じるのかもしれません。
幻覚剤は治療薬として主流になろうとしていますが、脳の回路のレベルでの説明はこれまで欠けていました。
今回の研究は、幻覚剤が脳の階層的な情報処理に与える影響を、信号の「動き」から根本的に整理するものです。
私たちが今いる周りの世界につなぎとめられているのは、感覚から上ってくる信号のおかげなのかもしれません。





















