算数が苦手な子の頭と脳では何が違っていたのか?

分析の結果、発達性ディスカリキュリアの子は、「数える」「思い出す」「分解する」のどの解き方でも、効率よく答えを出すことが苦手でした。
特定のやり方だけが弱いのではなく、解き方をこなす力そのものが全体的に下がっていたのです。
しかし、違いはそれだけではありませんでした。
苦手な子は、ある解き方から別の解き方へ切り替えるのに、もともと長い時間がかかっていました。
また、問題の難しさが変わっても、その変化に対する反応が鈍いことも分かりました。
さらに、その問題にいちばん合った解き方を選ぶことが苦手で、時間がたっても選び方が上達していかなかったのです。
研究チームは、算数のつまずきが、解き方をこなす力と、解き方を選んで切り替えるメタ認知の両方の弱さから生じていると結論づけています。
では、脳の活動にはどんな違いがあったのでしょうか。
脳の場所を1か所ずつ比べる従来のやり方では、苦手な子とそうでない子をはっきり見分けることはできませんでした。
ところが脳全体の活動の模様をまとめて調べると、2つのグループを正確に見分けられたのです。手がかりになったのは、脳の前側から頭頂部にまたがる領域、海馬(記憶に関わる部分)、ものを見ることに関わる領域などに広がるパターンでした。
しかもこのパターンから、数え上げる効率や、解き方の切り替えの敏感さまで予測できました。
特に目を引くのは、脳の活動と解き方の力の結びつき方が、2つのグループで逆向きになっていた点です。
算数を年齢相応にこなせる子ではプラスの関係だったのに対し、苦手な子ではマイナスの関係になっており、この逆転は海馬で最もはっきり表れていました。
研究チームは、脳のあちこちの活動と頭の働きとの対応関係が、苦手な子では変わっていると考えています。
また、解き方をうまく使えず、注意や思考、記憶をうまく制御できない状態が続くことが、発達性ディスカリキュリアの始まりに関わっているかもしれないとも述べています。
さらに、変化した脳の活動が、こうしたつまずきを生む要因の1つである可能性も挙げています。
研究チームのオリバー・ラスニック氏は「この研究は、ディスカリキュリアに見られる一人ひとりの違いも浮き彫りにしており、この障害が複数の働きにまたがる認知と神経の不調であることを示しています」と話しています。
算数が極端に苦手な子のつまずきは、計算の手順だけでなく、どの解き方を選び、いつ切り替えるかという「作戦を立てる」段階にも広がっていたのです。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(一生懸命なのに算数が苦手な子供がいるのはなぜか? スタンフォード大が見つけた「脳のクセ」)
宿題の前で鉛筆が止まっている子の頭の中では、答えを出すより前の「どうやって解こうか」という場面で、すでに見えない苦労が始まっているのかもしれません。
今夜の宿題タイムは「集中して」の代わりに「今日はどの作戦でいく?」と声をかけてみると、答えに詰まるのはむしろ親のほうかもしれません。





















