Point
■会話分析を行うAIを用いて、統合失調症などの精神病を判断する研究が行われた
■このAIでは、ニューヨーク・タイムズやネット掲示板の膨大な文章から会話の内容を解析する機械学習を行っている
■最終的にAIは、会話の意味密度、頻出する単語傾向などから90%近い精度で患者を判断することに成功した
精神病の判定は、センシティブな問題で、専門の医師でも判断するのが難しいものです。
特に、症状の早期発見となると、それはかなり難しい問題になります。
確かに、精神の病をどう定義し、定量評価を行うかは今もあいまいで、精神科は高度に機械化されていく医療診断の分野で、未だ取り残された領域と言えるでしょう。
この問題について、最近はAIを用いて判断する研究に関心が集まっています。
それはAIなら、精神症状に見られる明らかな共通点を、客観的に判断することが可能と期待されるためです。
そこで、何に着目して分析を行うかという点が、この研究の肝となります。これまでにも、マイクロソフトなどが被験者の表情や音声から精神症状を診断する研究を行っています。
今回報告された研究では、この精神症状の分析において、被験者の会話内容に着目しており、AIは90%近い精度での患者の判定に成功しています。
この研究は、ハーバード大学とエモリー大学の研究者から発表されていて、6月13日付でネイチャー・パートナー・ジャーナル Schizophreniaに公開されています。
https://www.nature.com/articles/s41537-019-0077-9
統合失調症の会話傾向
統合失調症や双極性障害(旧名:躁うつ病)の患者には、共通した会話の傾向があります。
その1つが、会話の意味密度が低いというものです。意味密度とは、使用している単語の数に対してあまり意味のないことを言っているということです。
多くの言葉を使いながら、ほとんど意味を伝えない人というのは、統合失調症や双極性障害を発症するリスクがかなり高いと考えられます。