会話から精神病リスクを発見するAI
エモリー大学の精神科医が行った研究では、こうした会話の意味密度に着目しています。
AIに被験者40人の会話サンプルを聞かせ、意味密度の低い人の抽出を行った結果、後続の調査で抽出された対象の80%が実際に精神病を発症したのです。
またこのAIは、ニューヨーク・タイムズなど新聞の文章や、Redditという海外の電子掲示板(5ちゃんのようなもの)の3万人の投稿者の間で交わされた会話を利用して、単語の意味が近いもの同士をクラスタ分けする機械学習も行っています。
この学習によって、AIは潜在意味解析という、会話を行っている人物が潜在的に興味を向けている話題を抽出することも可能です。
この解析の結果、これまでに見つかっていなかった新たな精神病リスクのある会話傾向が発見されました。
それは精神病を発症した人たちは、「声」「音」「聞こえる」「ささやき」といった種類の、主に聴覚に関係する話題に強い関心を寄せる傾向があるというものです。
こうした聴覚に関係する概念クラスタは、興味深いことに学習時に利用された会話サンプルの中には生じていませんでした。
この潜在意味解析の結果も踏まえ、意味密度の低さ、聴覚に関連する単語の利用頻度を含めてAIに会話を分析させた結果、精神病の検出率は90%以上になったのです。
おそらくこの結果は、幻聴のようなものに言及することが多いことが一因と考えられます。またちょっとした雑音に反応しやすいという傾向にもつながる可能性があります。
これまで明らかではなかった事実が、AIの分析によって発見されるというのは面白い結果です。
最近は大きな犯罪を犯す人物が、事前にネットへ書き込みしていたという事実も多く聞かれます。今回は学習段階で、掲示板の書き込みが利用されたということですが、もしかしたら、そのうち、掲示板の書き込みからAIが危険人物を判定して通報するという時代が来るのかもしれません。