休日ゴロゴロ派、人生の意味を逃しているかも?

私たちは毎日の生活のなかで、学校や仕事といった「やらなければいけないこと」にかなりの時間を使っています。
大人になって働くようになると、1日の多くの時間は仕事に取られてしまいます。
例えばアメリカで仕事をしている人の場合、起きている時間のだいたい半分くらいは仕事をして過ごしています。
ですが実は、この「仕事の時間」は昔に比べてどんどん減ってきているのです。
過去100年以上にわたって、仕事に使う時間は少しずつ減り、その代わりに自由に使える時間(余暇)が増えています。
しかも、これから未来に向けて、この「仕事の時間」はさらに減っていくと考えられています。
その理由は、ロボットや人工知能(AI)の登場です。
近い将来、多くの仕事がロボットやAIに置き換えられて、人間が働かなくても良くなる可能性があるのです。
これは一部で「自動化爆弾」と呼ばれています。
「働かなくてもいい時間が増える」と聞くと、とても良いことのように思えます。
ですが、本当に良いことばかりでしょうか?
実は、多くの人にとって「仕事」は生活費を稼ぐだけでなく、生きがいや人生の意味を与えてくれる大事な役割を果たしています。
嫌われがちな仕事や勉強も、実際には自分にとっての目的ややりがいを感じるための大切な場所なのです。
そう考えると、もし仕事が減って余暇ばかりが増えたら、「人生の意味」や「生きがい」を感じにくくなってしまうのではないでしょうか?
しかしここで考えてほしいのは、「人生の意味を感じるのは、必ずしも仕事だけとは限らない」ということです。
実際、私たちは普段の生活でも、友達と遊んだり、趣味に没頭したりするときに「楽しい」だけでなく「意味がある」と感じることがあります。
「一見大変そうな趣味や遊び」に取り組む人も多くいます。
たとえば、ボランティア活動や、難しいゲームに挑戦したり、スポーツに打ち込んだりする人たちです。
こうした、「自分が選んで頑張ってやる余暇活動」は、専門的には「シリアス・レジャー(真剣な余暇)」と呼ばれています。
「シリアス・レジャー」とは、ただリラックスしたり、だらだら過ごしたりする余暇ではなく、自分が好きで自主的に努力を伴って取り組む活動のことです。
興味深いことに、こうした努力を伴う余暇は、時には「楽しむだけ」の娯楽よりも、より深く人生の意味や充実感をもたらす可能性が指摘されています。
仕事が減った未来では、こうした「努力を伴う遊び」が、「仕事が持っていた生きがいや目的感」を埋め合わせてくれるのではないかと考えられています。
そこでカナダにあるトロント大学(University of Toronto)の研究チームは、次のような疑問を抱きました。
「余暇の過ごし方次第で、仕事がなくなってしまっても人生の意味を補えるのだろうか?」
私たちは自由な時間があると、つい何もしないで楽な娯楽ばかりを選びがちです。
例えば、テレビをぼーっと眺めたり、スマホでSNSをダラダラと見続けたりするような、あまりエネルギーを使わない遊びです。
でも、研究者たちは「人は確かに余暇ではリラックスしたいと思っているけれど、本当は『ちょっと大変な活動』のほうに意味や充実感を感じる傾向があるのではないか」と考えました。
これが、研究チームが探りたかったことです。
つまり彼らは、「仕事が減る未来においても、『努力が必要な余暇』が、意味深さ、充実感、目的感を支えてくれる可能性があるのでは?」と考えたのです。
こうした疑問を明らかにするために、研究チームは合計で5つの研究を行いました。