地球には1日に数百万の隕石が飛来していますが、ほとんどが大気圏内で燃え尽きるため、地上には届きません。
ところが、中には大気圏を生き残って地上に落下するものがあります。
NASAのデータベースによれば、1988年以来、上空で爆発して隕石のつぶてを降らしたケースは少なくとも822回確認されているそうです。また、1日に最大17個のつぶてが地上に落ちています。毎日それだけ落ちていれば、隕石に当たって命を落とす人がいてもおかしくありません。
ところが意外なことに、隕石の落下によって負傷した人はいても、死亡したケースに関しては、信頼に足る記録はありませんでした。
しかし、4月22日付で発表されたトルコ・エーゲ大学の研究によって、ついに隕石により死亡した男性の事例が見つかったのです。
隕石で死亡した唯一の人物か?
この事例は、トルコの歴史文書が保管されている「国家文書総局(General Directorate of State Archives)」にて発見されました。
研究チームは、同じ事件について記録した別々の文書を3つ発見しています。それらはデジタルのアーカイブに移されたばかりで、翻訳に骨の折れるオスマントルコ語で書かれていました。
内容を要約すると次の通りです。
事件が発生したのは、1888年8月22日。現地時間は、午後8時30分ころで、空に大きな火の玉が出現した。
その後、火の玉は上空で爆発、およそ10分間にわたって小村(現在のイラク・スレイマニヤ)に隕石のつぶてを降らし続ける。
それにより、男性1名が死亡、別の男性が重傷で、麻痺症状を負う。また、爆発の影響で、農作物に被害も出た。
研究チームによると、この文書は「隕石の落下で死亡者が出たことを証明する初めての証拠」とのことです。
しかも、文書は、地方自治体が事件の詳細を政府(当時はオスマン帝国)に報告するために書かれたものなので、記述の正確性も高いと思われます。
一方で、隕石が出現した場所や高度、サイズ、スピードなどは分かりません。
現時点では、南東の空から落下地点のスレイマニヤに向かって飛来したと考えられています。
死亡した男性については、詳しい記載がなく、名前や正体も不明です。史上最も運の悪い人物だったことは確かでしょう。