痛みの発信源を焼き殺す
鍵となったのは、古来より用いられて来たヤキゴテでした。
ただし、用いるのは赤く熱された鉄塊ではなく、針と電波です。
患部に挿入された微小な針の先端に対して電波を浴びせることでピンポイントでの加熱を行い、問題となっている病変部分を局所的に焼き殺すのです。
この局所的な焼き殺し(アブレーション)は従来、手術の難しい心臓などに対して行われてきました。
しかし今回、研究者たちは、この焼き殺しが痛みの発信源である神経細胞に対しても有効であると考え、肩と股関節の関節痛に苦しむ患者に対して実験を行いました。
使用された針は長さが50ミリから150ミリであり、1分半の電波照射により、針の先端温度は80℃まで上昇。
その結果、肩に対しては85%の患者で痛みが減少し、腕の取り回しなどの機能が74%増加しました。
また股関節に対しては70%の患者で痛みが減少し、機能が66%増加したとのこと。
さらに驚くべきことに、治療による副作用は一切みられませんでした。
この事実は、局所的な神経細胞の焼き殺しが体の自由を奪わないまま、痛みの感覚だけを遮断したことを意味します。