好奇心スタイルから見える、教育と感情的幸福の関係
調査によると、ハンタースタイルは、特定の知識のギャップを埋める必要性に駆られて情報を探しているように見えました。
一方で、ビジーボディスタイルは、まったく新しい知識に出会いたいという欲求を持っている傾向が示されました。
こうしたスタイルは、その人の幸福感に関連していて、ストレスの状況や社会との関わり方が影響を与えて変化していくようです。
貧困など自分に何か足りていないと感じることが多い人(剥奪感が高い)は、知識ギャップを埋めるような行動が目立ち「ハンター」の傾向を示します。
逆に、満ち足りているという感覚が強い人は、楽しみのために自分を驚かせる新しい知識を積極的に求める傾向がありました。
剥奪感が高い参加者では、たとえば「ドイツとユダヤ人の歴史」から「ヘプヘプ暴動」「シオニズム」など、ユダヤ人の歴史に集中して検索を続けましたが、反対のスペクトルを示した人では、「物理化学」から「MeToo運動」へ飛ぶなど、まるで関連しない知識のネットワークを示しました。
もちろん単なる幸福度だけの問題でなく、好奇心スタイルにはそれぞれに異なる動機や目的があるだろう、と研究者は述べています。
好奇心にこうしたスタイルが存在することは、教育がどうあるべきか? という問題も提示しています。
教室の中で、これらのデータがどう利用できるかを理解するには、まだまだ研究が必要ですが、生徒の好奇心のスタイルに合わせて知識の与え方を調整する方法が必要になるだろうと、研究者は語っています。
確かに、現在の学校教育では、幅広くいろんなことに興味を向ける人、まったく予期しない新しい知識との出会いを楽しみたい人には、うまく対応できません。
学校の勉強はあまり熱心になれなかったのに、大人になったら熱心にウィキペディアや科学サイトを閲覧しているという人も、世の中に多いのではないでしょうか?
それは1つの情報をひたすら追うより、新しい知識のつながりを構築することにワクワクする、「ビジーボディ」の好奇心スタイルを持っているためなのかもしれません。
思い返してみると授業が面白い先生は、たまに話が脇道にそれて、まったく新しい知識や雑学を交えながら授業を進めていたような気もします。
ハンタースタイルの人は、そんな授業がよく脱線する先生は苦手だったかもしれません。
今回の研究は、そうした好奇心のスタイルを可視化できる仕組みの可能性を示しています。
将来的には、生徒の好奇心のスタイルに応じて、それを尊重して勉強させていく方法も提示できるようになるかもしれません。
深く知識を追求するのか、思わぬ新しい知識に出会い驚きと喜びを得るのか、なんにせよ好奇心は、私たちの幸福にとっても重要なものであるようです。