カツオノエボシの危険性
なぜカツオノエボシは危険生物として知られているのでしょうか。その理由は
・猛毒であること
・行楽シーズンに到来すること
・見つけにくいこと
などが挙げられます。
カツオと同時期に到来しますが、その時期は初夏~秋です。
初夏の黒潮に乗って来るため、巷でも「旬のカツオのたたき!」なんて商品が出回ります。
そしてその時期は、よりによって海岸の行楽シーズンです。
よって、人々が刺される事が多くなり、注意喚起される事も多くなっていきました。
シーズンさえズレれば、こんなに煙たがられる事もなかったかもしれませんが、我々の空気は読んでくれなかったようですね。
また、その身体は青透明色をしており、海の色と同化してしまいます。
台風後などに海岸に漂着した場合でも、まるでプラスチックゴミのように見えるのです。
このように「気づかれないことが多い」ため、誤って触れてしまい、その猛毒にさらされる事件が起きます。
カツオノエボシに刺激を与えると、触手の表面にある「刺胞」という毒針が発射されますが、この猛毒性が危険であるとされます。
では具体的にはどのような症状が起こるのでしょうか。
カツオノエボシの毒に見られる症状
【刺されてしまった場合】
・咳
・くしゃみ
・脱力感、不安感
・じんましん
・ミミズ腫れ、火ぶくれ、炎症
・皮膚壊死性
・燃えるような激痛
・嘔吐
・心拍数上昇
・心悸亢進
・心臓毒性、心臓発作
・ショック状態
・刺されたのが二度目だと、アナフィラキシーショックが起こり、呼吸困難、窒息死など
に見舞われます。
症状の程度は個人差がありますが、痺れるような激痛を感じる事が多いため「電気クラゲ」とも呼ばれるのですね。
そんな毒の成分は、基本的にタンパク質性です。
タンパク質の細かいものをペプチド、もっと細かくしたものをアミノ酸と呼びますが、厳密にはペプチド毒性のようです。
また、複数の酵素(これもほぼタンパク質で構成されています)も混ざり合っています。
中でも注意すべきなのは「ヒプノトキシン」という毒です。
ギリシャ神話の眠り神ヒプノス+毒のあるタンパク物質「トキシン」から命名されたように、
この毒が注入された動物は、神経麻痺を起こした後、死亡してしまいます。
では体内に毒を入れてしまった際には、どのように対処すれば良いのでしょうか。
刺されたときの対処法、治療法
刺されてしまった場合は一般的に、
・患部を冷やす
・海水で洗い流す(真水は逆効果)
・落ち着いて陸にあがる
・素手ではなく、タオルや厚手の手袋をした状態で、触手を取り除く
・抗ヒスタミン剤の軟膏やステロイド外用薬の軟膏を塗布
することが有効です。
しかし、これらはあくまで応急処置であるため、その後速やかに医療機関を受診しましょう。
覚えておくべき!やってはいけない対処法
やると症状が悪化してしまい、逆効果になる対処法は、一般的に
・お酢をかける
・真水で洗い流す
・温める
・砂をかけて擦る
などです。
また、真水で洗ってしまうと浸透圧(濃度をどこでも均一にしようとする力)の差で、毒針から毒が真水に流れ出て体内に入ってきてしまいます。
海水や塩水で洗うならば、むしろOKです!
温めると、炎症反応が進行し、温熱刺激で刺胞が活性化してしまいます。
毒針を抜いた後の患部であれば、40℃程度のお湯に晒すと、タンパク質の熱変性により痛みがやわらぎますが「棘が残っているか判断できない」「温度が厳密に測れない」といった状況下では、安易にトライしない方が賢明でしょう。
ここまで来ると「擦る行為」がご法度な理由も、お分かりでしょうか?
刺激を与えてしまい、毒針が皮膚により深く刺さるためです。