破壊されたマウスの筋肉再生をマッサージで加速させることに成功
マッサージに医学的な治癒効果があるとする考えは長年、西洋医学の原理主義者たちにとって「嘲笑」や「冷笑」ときには「非科学的」「東洋人的な思い込み」とみなされてきました。
それらあざけりの最大の原因は、西洋的な方法(いわゆる科学的方法)にのっとって、マッサージの効果を分子レベル・細胞レベルで立証することが、困難だったからです。
しかし現実世界で活躍する一流のアスリートたちにとって、優れたマッサージ師を持つ優位性は既に常識のレベルに達しています。
この奇妙な乖離は、一般の人々にとっても混乱のもとになっていました。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは嘲笑されるのを覚悟の上で、上の動画のような「一見して冗談に思える装置」を開発しました。
この装置はマウスの脚を固定する拘束具と、マウスの脚をマッサージするシリコン製のヘッドによって構築されています。
研究者たちはこの装置に、脚の筋肉を損傷させたマウスを設置(※マウスは薬で眠らされています)。
そして損傷した筋肉に対して14日間にわたり、一貫して同じ強さの力を加え続けました。
結果、装置による治療(物理刺激)を受けていたマウスはただ放置されていたマウスと比較して、筋肉の再生速度が2倍になり、組織に瘢痕(消えにくい傷跡)が残る可能性を大幅に減少させることを発見します。
また筋肉を摘出して断面図を比較すると、装置による治療を受けていたマウスは、そうでないマウスに比べて、筋線維がより太くなっており、治療は筋線維の強度回復にも有効であることが示されました。
また実験データを分析すると、治療中に加えられる力が大きいほど、損傷した筋肉の回復力が高まる傾向がみられました。
問題は、その理由です。
ここで実験を終えてしまえば他の多くの研究のように因果関係を示したのみで、分子レベル・細胞レベルでのメカニズムの解明はされず、否定派の蒙を啓くことはできません。
そこで研究者たちは治療を受けたマウスと放置されたマウスの筋肉を詳細に比較し、違いを調べました。
すると、マッサージと免疫の間には、全く知られていなかった新たな仕組みが存在していることが判明します。