世界で初めて発見された「聖書のバルサム」が彫刻されたアメジスト
発見された宝石は約2000年前のもので、西暦1世紀に指輪としてリングに装着されていたと考えられています。
これはライラックアメジストと呼ばれる種類のもので、透明度が高く植物の「ライラック(紫丁香花)」のような美しい紫色をした天然石です。
ところが持ち主は、この宝石を排水溝に落としてしまったようです。
しかも、その数年~数十年後には、ローマ軍がエルサレムの第二神殿を破壊。
これにより埋もれてしまった宝石は、現代まで2000年間眠り続けていたのです。
さて、今回のアメジストには世界で初めての発見が含まれています。
それはアメジストの彫刻です。
もちろん彫刻された宝石自体はそれほど珍しくなく、これまでにも、当時イスラエルで一般的だったブドウやオリーブなどの彫刻が見つかっています。
ところが今回のアメジストには、ハトと5つの実が付いた珍しい植物が彫刻されていました。
考古学者によると、この植物は聖書に登場する「バルサムの木」ではないかと推測されています。
聖書に登場する象徴的な植物としてはオリーブが有名ですが、バルサムも同様にモチーフとなる有名な植物です。
しかし、バルサムの木が彫刻されている宝石が見つかったのは、これが世界で初めてなのです。
聖書には「バルサム」という名称が香油として、またはその原料である植物の名前として登場します。
バルサム油は香水や薬、また神殿で焚かれる香として利用されていたようです。
そしてバルサムは非常に高価で貴重だったため、その原料であるバルサムの木の栽培はユダヤ人たちによって厳重に管理されてきました。
そのため考古学者は、「このアメジストの指輪の持ち主は、おそらくバルサムの樹木園の所有者で、非常に裕福な人だった」と推測しています。
このように新しく発見されたライラックのアメジストは、その美しさだけでなく、考古学的に価値が高いものとして、学者たちの興味をひくものとなりました。