協力的な犬、気ままな猫
誰かが困っているとき、そっと手を差し伸べる行動を、専門用語では「向社会的行動(prosocial behaviour)」と呼びます。
これは、相手のために何かをするという自発的な意志に基づく行動のことで、人間社会を支える大切な基盤の一つです。
人間の子どもは、言葉を十分に話せるようになる前の14〜18カ月頃から、大人が落としたものを拾うなどの「お手伝い」を始めることが知られています。
研究者たちは長年、この温かな振る舞いが人間に特有のものなのか、それとも人間と一緒に暮らす動物たちにも備わっているのかを議論してきました。
特に注目されたのが、私たちと最も身近に暮らすパートナーである犬と猫です。
犬は長い歴史の中で、羊を追ったり狩りを手伝ったりと、人間と協力するように選別されてきました。
一方で猫は、ネズミを捕ることで人間と利害が一致し、緩やかな関係を築いてきたという異なる背景を持っています。
研究チームは、同じ「人間の家」という環境で育ちながらも、進化の道のりが異なる子ども、犬、猫を同じ土俵で比較することで、協力する心の正体を探ろうとしました。
実験の方法は、日常の何気ない「探しもの」の場面を再現したものです。
まず、研究者が被験者(子ども、犬、猫)の目の前で、彼らにとってあまり興味のない「スポンジ」を棚の上などの届かない場所に隠します。
その後、隠し場所を知らない親や飼い主が登場し、「あれ、どこにいったかな?」と困った様子で探し始めます。
このとき、言葉によるお願いは一切しません。
果たして、彼らは自発的に場所を教えたり、手助けをしたりするのでしょうか。
実験の結果、犬と人間の子どもは非常に似た反応を見せることがわかりました。
飼い主が困っている様子を見ると、犬や子どもは隠された場所をじっと見つめたり、飼い主と場所を交互に見たり(交互凝視)して、場所を伝えようとする仕草を頻繁に見せました。
これに対し、猫がこのような「場所を教える行動」を見せる割合は、犬や子どもに比べて明らかに低くかったのです。
しかし、隠したものがスポンジではなく「自分の大好きなオモチャや食べ物」に変わると、猫も犬や子どもと同じくらい積極的に場所を示すようになりました。
この結果は、猫には状況を把握する能力があるものの、自分にメリットがない場面では「助けよう」という意欲が起きにくい可能性を示唆しています。























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