唐辛子を口に含み、手にレーザーを照射する実験
唐辛子を食べたときに感じる「熱さ」は、食べ物そのものが高温だから生じるわけではありません。
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが、口や皮膚の感覚神経にあるTRPV1という受容体を刺激し、脳に焼けるような感覚を伝えています。
TRPV1は本来、体に害を及ぼしかねない高温などを検知する仕組みに関わっています。
そのため、唐辛子の辛さは甘味や塩味のような一般的な味覚というより、痛覚や温度感覚に近い刺激です。
そしてカプサイシンを含むクリームやパッチは、一部の慢性的な痛みを和らげる目的でも使われています。
しかし、口内に短時間の辛味刺激を与えたとき、体の別の場所で生じる急性の痛みがどう変わるかについては、これまでの研究で一貫した結果が得られていませんでした。
そこで研究チームは、口の中に生じた辛味が、手で感じる熱痛を弱めるかを調べました。
さらに、普段の辛いものに対する好みと、痛みへの敏感さや恐怖との関連も検討しています。
実験には健康な若い成人48人が参加し、約1週間の間隔を空けて研究室を2回訪れました。
一方の日には砕いた唐辛子を含むゼラチンキューブを、もう一方の日には辛くない水ベースのゼラチンキューブを口の中に5分間保持しました。
参加者はゼラチンを噛んだり飲み込んだりせず、5分後に吐き出して口を水ですすいでいます。
その後、左手の甲に40回のレーザー熱刺激を受けました。
内訳は弱い刺激20回と強い刺激20回で、参加者は刺激を受けるたびに、痛みの強さと不快さをそれぞれ評価しました。
レーザーの強さは、痛みの感じ方の個人差を考慮し、参加者ごとに事前調整されています。
分析の結果、辛味刺激の後では強い熱痛の評価が低下しましたが、弱い熱痛では明確な差がありませんでした。
より詳しい結果と、辛味が痛みに影響した理由を次項で見ていきましょう。




























