「自分だけが報われない」という感覚は人間関係を変えるのか
私たちは、収入や仕事、暮らしぶりなどを周囲と比べながら、自分の立ち位置を確かめています。
こうした比較は目標を決める助けになりますが、自分より恵まれた人ばかりが目に入ると、「自分だけが不当に少ないものしか得ていない」という不満につながることがあります。
心理学では、この主観的な感覚を「個人的相対的剥奪感(personal relative deprivation)」と呼びます。
実際に貧しいかどうかではなく、自分と周囲との差をどう受け止めるかがポイントです。
これまでの研究では、この剥奪感が攻撃性や貪欲さの高まり、他者を助ける行動の減少などと関連することが報告されてきました。
しかし、それがなぜ人間関係を損なうのか、その心理的な道筋は十分に分かっていませんでした。
そこで研究チームは、剥奪感が強まると、人間関係を貸し借りや費用対効果で捉える「交換志向」が強くなり、相手の意思や感情よりも、自分にとっての有用性を重視する「他者の客体化」につながるのではないかと考えました。
研究1では、中国の大学新入生3482人に、周囲より不利だと感じる程度と、「必要なときだけ相手に連絡する」といった道具的な対人姿勢を尋ねました。
研究2では成人250人を対象に、剥奪感と客体化に加え、人間関係の損得や見返りをどれほど意識するかを測定。
ナルシシズムなどの性格特性や権力欲求が結果に影響していないかも調べています。
さらに、研究3では成人194人に、資源を得るには飛行能力が重要となる架空の惑星で暮らしている場面を想像させました。
参加者は、自分より社会的地位の高い住民と比べる条件か、地位の低い住民と比べる条件に無作為に分けられ、その後、新しい友人にどのような特徴を求めるかを回答しました。
3つの研究を通じて、剥奪感は交換志向の強まりと結びつき、相手の実用的な価値を重視する傾向へつながることが示されました。
より詳しい結果と、その背景にある心理的な仕組みを次項で見ていきます。





























