最大の武器「平たい顔」が致命的に?
本研究では、2016年以降にイギリス全土の動物病院がRVCのデータベースに記録した、フレンチブルドッグ2781頭と他の犬種2万1850頭の病歴を分析。
具体的には、43の特定疾患の診断率をフレンチブルドッグと他の犬種で比較しました。
その結果、フレンチブルドッグは、20項目の疾患において有意に大きなリスクを負っていることが分かったのです。
疾患の中には、呼吸困難の原因となる鼻孔狭窄(42倍)、閉塞性気道症候群(31倍)、耳漏(14倍)、鄒壁性皮膚炎(11倍)、出産困難(9倍)などが含まれています。
※耳漏(じろう)=耳の穴から膿が出てくる疾患
※鄒壁(すうへき)性皮膚炎=顔のシワが原因となる皮膚病
研究主任のダン・オニール(Dan O’Neill)氏は、次のように述べています。
「多くの人が、フレンチブルドッグを愛していることに疑いはありません。しかし悲しいことに、本研究は、これらのイヌに影響を与える深刻な健康問題を明らかにしています」
容姿を変える必要性
その一方で、フレンチブルドッグは、20の疾患のリスクが非常に高いにもかかわらず、調査した43の一般的な疾患のうち、歩行困難、肥満、望ましくない行動など、11の疾患を発症する率は他の犬種より低かったようです。
これは、フレンチブルドッグが、疾患リスクの高い身体的特徴を選択的に排除することで、より健康的な形態へと移行できる可能性を依然として持っている証拠である、と研究チームは指摘します。
オニール氏は、イヌの形態を人為的に変化させることについて、「フレンチブルドッグの外見を時間をかけて変化させるためには、ブリーダーと繁殖基準を公表しているザ・ケネルクラブ(世界最古の畜犬団体)の賛同が必要」と言います。
ザ・ケネルクラブは最近、健康に悪影響となる形態を避けるために、フレンチブルドッグの犬種標準を更新しました。
「これは、イヌの見た目に対する飼い主の願望よりも、彼らの健康を優先させる非常に前向きなステップであり、私たちは今、この犬種をより穏やかな形態に向けて進化させなければならない」と動物疫学者は語ります。
また、イギリス獣医師会会長のジャスティン・ショットン(Justine Shotton)氏は、こう述べています。
「現在、ソーシャルメディアや有名人の影響で、フレンチブルドッグの人気は急上昇しています。
しかし不幸なことに、その愛らしい特徴は、多くの健康問題を覆い隠してしまい、高額な治療費が必要になることがあるのです。
獣医師の間では、フレンチブルドッグを家族に迎える際に、多くの飼い主がこうした問題に気づいていないことが懸念されています。
私たちは、ペットを飼う前に、特定の犬種や交雑種が特定の病気にかかりやすいかどうか、健康診断が必要かどうかなど、よく調べておくことを常におすすめしています」
今後、フレンチブルドッグの健康問題が公になれば、積極的に容姿を変化させる取り組みが進むでしょう。
それに伴い、特徴的な「平たい顔」はなくなるかもしれませんが、彼らの健康を思えば致し方ないのかもしれません。