種の上位クラス「属・科」も新たに設立!
鹿児島北西部・出水市小次郎川の沿岸干潟にて、同大農林水産学研究科の院生が、泥中に沈潜していた全長15cmのチワラスボを採取し、尻びれに体長1.3mmの微小な甲殻類が付着しているのに気づきました。
既存の種に該当しない生物であったため、甲殻類を専門とする上野氏が調査を開始。
その結果、この生物は「種」だけでなく、その上位分類である「属」および「科」でさえ該当するものがないレア種であることが判明しました。
そのため、この生物は新科・新属・新種として記載、正式な学名は「コレフトリア・シラヌイ(Choreftria shiranui)」と命名されています。
属名のコレフトリアはギリシア語で「ダンサー」を意味し、種小名のシラヌイは産地である八代海(やつしろかい)の別称、不知火海に由来します。
そして、標準和名には「オシリカジリムシ科・オシリカジリムシ属・オシリカジリムシ」と命名されました。
コレは本種が、チワラスボの尻びれにくっついて共生する生態と、上野氏が個人的に好きだというNHKみんなのうたの人気キャラクター「おしりかじり虫」から来ています。
なお、和名の記載にあたっては、商標登録をしているNHK、および作詞・作曲を手がけた「うるまでるび」氏に事前相談し、許可を得ているとのことです。
その一方、本個体がメスであること以外、詳しい生態はほぼ何もわかっていません。
近縁種も見つかっていないため、どのような生活環で、いかに繁殖するかも謎です。
それでも、種の上位分類である属・科まで新たに設立されることは珍しく、甲殻類の進化史を理解する上での学術的意義はかなり大きいと言えるでしょう。
また、新種の発見が、生物学界にとって嬉しいニュースであることに変わりはありません。
「オシリカジリムシ」という命名はふざけているようにも聞こえますが、単純に趣味だけで決まったことではなく、こうした生物学上の重要発見が一般から見過ごされないようにする狙いもあるようです。
もしこの命名に釣られて、普段新種生物発見に興味を向けない人が、ついついこの記事を読んでしまっているのだとしたら、氏の目論見は見事に成功したといえるでしょう。
鹿児島沿岸は、世界的に見ても生物相の豊かな海域であり、これまでにも数多くの新種生物が報告されてきました。
今回の発見により、さらなる新種の発見が期待されています。