「繁殖力」を手に入れながら「老化」を止める方法とは?
研究チームは、インドクワガタアリのガマゲイト(擬似女王)と働きアリから組織サンプルを採取し、脳や卵巣、脂肪体(肝臓)など、代謝と繁殖に関わる部位を詳しく分析。
その結果、働きアリからガマゲイトになったアリは、卵を産むために、脳内でのインスリン分泌レベルが増大していることがわかりました。
このインスリン増加は、2つの主要なインスリンシグナル伝達経路のうちの1つである「MAPK経路」を活性化し、代謝と産卵活動を促進していたのです。
一方で、インスリンの増加は、ガマゲイトにおける卵巣の発達を誘導し、この卵巣が「Imp-L2」というインスリン抑制タンパク質の生産を開始していました。
そして、Imp-L2は、もう1つの主要なインスリンシグナル伝達経路である「AKT経路」の活性化を阻害していたのです。
AKT経路は、老化の制御に関わっており、その活性レベルが上昇すると寿命が短くなることがわかっています。
つまり、AKT経路が阻害されることは、老化が抑制されることを意味するのです。
よって、インドクワガタアリは、2つのインスリンシグナル伝達経路(MAPKとAKT)を異なる形で制御することで、「繁殖力」と「長寿」を同時に獲得していたと結論できます。
本研究の成果は、他の生物の「繁殖」と「寿命」を理解する上でも、非常に示唆に富むものです。
研究チームは次なるステップとして、Imp-L2(インスリン抑制タンパク質)が老化に関する経路のみを遮断し、生殖に関する経路は阻害しないメカニズムを解明していくとのこと。
その後は、Imp-L2のアンチエイジング効果をミバエで検証し、最終的には哺乳類でも試す予定です。