現実は幻に過ぎないのか?
現実が幻であるという概念は、古くは古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427年)によって提唱されました。
プラトンはイデア論にて、目に見える世界は真の存在の不完全な仮の姿が投影されたものに過ぎないと述べています。
この現実が虚像であるとする考えは、プラトン以降さまざまな哲学に継承され、現代では宇宙の全てがシミュレートされた存在であるとする「シミュレーション仮説」にも取り入れられています。
シミュレーション仮説を支持する人々は、私たちの存在や現実が唯一無二であるよりも、高度な文明によってシミュレートされた無数の世界の1つであるほうが「確率が高い」と主張します。
しかし、私たちの世界がシミュレーションされたものであるのか、そうでないのかを知るには、どうしたらいいのでしょうか?
世界の外に通じる扉(あるいはログアウト画面)のような物的証拠があれば話は簡単です。
ただリクエストしても出現しないことを踏まえると、(たとえ存在したとしても)内部からの働きかけで発見するのは、まず不可能でしょう。
またシミュレーションの完成度が高ければ高いほどバグの頻度も低く、観測は困難となります。
そこで今回、ポーツマス大学の研究者たちは、世界のほころびを探すのではなく、状況証拠を集める方針を採用しました。
そのための方法として採用されたのが「情報力学の第2法則」です。