情報力学第2法則はこの世界がシミュレーションであることを示している
情報力学第2法則はこの世界がシミュレーションであることを示している / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
physics

情報力学第2法則はこの世界がシミュレーションであることを示している

2023.10.31 Tuesday

情報理論は世界の秘密を暴くのでしょうか?

英国のポーツマス大学(UOP)で行われた研究によって、情報力学第2法則の存在は、私たちが存在する宇宙全体がシミュレーションであることを示すとする、興味深い結果が発表されました。

情報力学は情報は宇宙の基本的な構成要素であり、エネルギーと質量の両方を持つ物理的な存在であると定義しており、既存の情報熱力学とは厳密には異なっています。

また情報力学第2法則においては、あらゆる現象の情報内容は最小限に抑えられる傾向があるとされています。

新たな研究ではこの情報力学の第2法則による情報圧縮が、生物の遺伝情報や原子の情報量、数学的対象性、さらには宇宙全体に対して普遍的に適合できることを示しています。

また情報圧縮が起こるように世界がプログラムされているのは、この世界をシミュレートする演算機の負荷を軽減する目的があるためだと述べられています。

情報力学は、私たちを外の世界と繋ぐ鍵となってくれるのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年10月6日に『AIP Advances』にて「情報力学の第 2 法則とそれがシミュレートされた宇宙仮説に与える影響(The second law of infodynamics and its implications for the simulated universe hypothesis)」とのタイトルで公開されています。

Physics Revelation Could Mean We’re All Living in a Simulation https://www.sciencealert.com/physics-revelation-could-mean-were-all-living-in-a-simulation
The second law of infodynamics and its implications for the simulated universe hypothesis https://pubs.aip.org/aip/adv/article/13/10/105308/2915332/The-second-law-of-infodynamics-and-its

現実は幻に過ぎないのか?

現実は幻に過ぎないのか?
現実は幻に過ぎないのか? / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

現実が幻であるという概念は、古くは古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427年)によって提唱されました。

プラトンはイデア論にて、目に見える世界は真の存在の不完全な仮の姿が投影されたものに過ぎないと述べています。

この現実が虚像であるとする考えは、プラトン以降さまざまな哲学に継承され、現代では宇宙の全てがシミュレートされた存在であるとする「シミュレーション仮説」にも取り入れられています。

シミュレーション仮説を支持する人々は、私たちの存在や現実が唯一無二であるよりも、高度な文明によってシミュレートされた無数の世界の1つであるほうが「確率が高い」と主張します。

しかし、私たちの世界がシミュレーションされたものであるのか、そうでないのかを知るには、どうしたらいいのでしょうか?

世界の外に通じる扉(あるいはログアウト画面)のような物的証拠があれば話は簡単です。

ただリクエストしても出現しないことを踏まえると、(たとえ存在したとしても)内部からの働きかけで発見するのは、まず不可能でしょう。

またシミュレーションの完成度が高ければ高いほどバグの頻度も低く、観測は困難となります。

そこで今回、ポーツマス大学の研究者たちは、世界のほころびを探すのではなく、状況証拠を集める方針を採用しました。

そのための方法として採用されたのが「情報力学の第2法則」です。

次ページ情報力学では情報は物理的な存在として扱われる

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

物理学のニュースphysics news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!