AIの目をかいくぐって横断歩道を渡りきるゲーム
AIの目をかいくぐって横断歩道を渡りきるゲーム / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)
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自動運転AIの学習に「AIの目をかいくぐって横断歩道を渡る」変なゲームが開催される!

2023.11.17 Friday

人間の代わりに機械が運転を行う「自動運転車」は、現在、世界中で開発が進んでいます。

実用化を目指す上で大きな課題となるのは、「AIが歩行者を正しく認識し、交通事故を起こさない」という点でしょう。

最近、メディアアーティストの木原 共(きはら とも)氏とアートユニット「Playfool」のダニエル・コッペン氏は、自動運転車の安全性に一石を投じる参加型ゲームを開発しました。

プレイヤーはAIに歩行者と認識されないよう工夫して横断歩道を渡りきるようチャレンジします。

そしてこのゲームによって収集されたデータは、自動運転車のAIをトレーニングするのに役立つ可能性があります。

this street-based game challenges you to get hit by a self-driving car to outsmart its AI https://www.designboom.com/technology/street-based-game-self-driving-car-ai-daniel-coppen-tomo-kihara-11-10-2023/ How (not) to get hit by a self-driving car https://studioplayfool.com/how-not-to How (not) to get hit by a self-driving car – A street-based game that challenges visitors to avoid being detected in the eye of an AI. https://www.tomokihara.com/en/how-not-to-get-hit-by-a-self-driving-car.html

自動運転車に「ひかれる」ことを目指すゲーム

街頭に設置された参加型ゲーム
街頭に設置された参加型ゲーム / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

木原氏とコッペン氏によって開発されたユニークなゲームが、イギリス西部の都市ブリストルの街頭に設置されました。

このゲームの挑戦者には、「横断歩道を模した直線コースを渡りきる」というシンプルな目的が与えられます。

ただし、横断歩道全体はAI搭載カメラによって監視されており、その映像は目の前の巨大なスクリーンに映し出されています。

「歩行者」パーセンテージが一定以上になると失格
「歩行者」パーセンテージが一定以上になると失格 / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

そしてそのカメラに捕捉された挑戦者は、AIによって「歩行者」かどうか判断され、そのレベルがパーセンテージで表示されます。

この数値が一定以上になった瞬間、挑戦者の負けが決まります。

そのため彼らは、AIに「歩行者」だと認識されないよう工夫しながら、横断歩道を渡りきる必要があるのです。

 「だるまさんがころんだ」のAIバージョンと言えるかもしれませんね。

実際、挑戦者たちは、「ダッシュする」「服や自転車で体を隠す」「段ボールを被る」「三角コーンを被る」「二人一組で奇妙な歩き方をする」などして、AIの認識から外れようとしました。

そしてAIの目をかいくぐって勝利したプレイヤーは、今のゲームプレイ映像を使ってAIをトレーニングするか、データを即時消去するか選択できます。

段ボールを被る挑戦者
段ボールを被る挑戦者 / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

ちなみに、このゲームには物体検出アルゴリズムの1つである「SSD(Single Shot MultiBox Detector)」が使用されています。

SSDには大量の画像データを高速処理できるという特徴があり、自動運転システムに不可欠なリアルタイム処理が可能です。

ここまでくると明らかなように、この斬新なゲームは、自動運転システムを模倣したものとなっています。

二人で奇妙な動きをすれば、歩行者にはカウントされない!?
二人で奇妙な動きをすれば、歩行者にはカウントされない!? / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

つまり挑戦者たちは、「自分から自動運転車にひかれよう」と工夫していることになりますね。

そしてこのゲームは、自動運転車の性能向上に役立つ可能性があります。

実際、自動運転車はどんな状況だったとしても、横断歩道上の歩行者を検出すべきです。

たとえ、歩行者が大きな物を運んでいたり、車いすに乗っていたり、子供がふざけて遊んでいたりしても、そうすべきなのです。

ベビーカーに隠れる挑戦者。現実の世界でも似たような状況が生じるはず
ベビーカーに隠れる挑戦者。現実の世界でも似たような状況が生じるはず / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

そのためには様々なケースでAIをトレーニングしていく必要がありますが、多くの挑戦者が参加するこのゲーム自体がAIのトレーニングに役立ちます。

またこのゲームは、プレイヤーとして遊ぶ参加者たちに対しても、ある種の教育を施します。

まず遊ぶ中で、AI搭載のカメラが完璧でないことや、どんな状況が交通事故のリスクを高めるかを体感できます

さらに、ゲームに勝利した人は、「安全なシステムを構築するために協力する」ことと、「データを消去して自分を目立たせない」ことを天秤にかける必要があり、この判断が参加者たちの思考を刺激するものとなるでしょう。

自転車を盾にする挑戦者。ゲームに勝利した人は、そのデータを使ってAIをトレーニングするかどうか選択できる
自転車を盾にする挑戦者。ゲームに勝利した人は、そのデータを使ってAIをトレーニングするかどうか選択できる / Credit:Luke O’Donovan,Daniel Coppen, 北原共_How (not) to get hit by a self-driving car(Playfool)

木原氏とコッペン氏が作った一見楽しいゲームは、実は、自動運転システムの安全性に一石を投じるものであり、現在のAIをトレーニングするのに役立つかもしれなせん。

この参加型ゲームは、2023年7月3日から7日までブリストルで展示されました。

そして木原氏らは、このゲームをムンバイや東京などの混雑した場所にも設置したいと考えています。

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