バッタを「3Gの重力環境」で育てると体がパワーアップした!
バッタを「3Gの重力環境」で育てると体がパワーアップした! / Credit:川勝康弘,canva,ナゾロジー編集部
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バッタを「3倍の重力環境」で育てたら外骨格がパワーアップ!ただし5倍以上だと…

2023.12.10 Sunday

ドラゴンボールに出てくる惑星ベジータは重力が地球の10倍あります。

そんな環境で育ったサイヤ人たちは、地球人よりも遥かに優れた身体能力を手にしていました。

どうやらそれと同じことが地球のバッタにも起こるようです。

独ブレーメン応用科学大学(BUAS)の研究で、重力室の中で育ったバッタはわずか2週間で脚の強度がパワーアップすることが明らかになりました。

重力室でトレーニングを積んだ悟空のように、バッタも過重力に晒されることで強靭なジャンプ力を手にできるようです。

研究の詳細は、2023年12月6日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されています。

Locusts Raised in High Gravity Grow Freakishly Strong… Up to a Point https://www.sciencealert.com/locusts-raised-in-high-gravity-grow-freakishly-strong-up-to-a-point Insects take a spin in the lab – Growing-up in a centrifuge makes their skeleton stronger https://www.hs-bremen.de/en/hsb/news/news-item/insects-take-a-spin-in-the-lab-growing-up-in-a-centrifuge-makes-their-skeleton-stronger/
Insect exoskeletons react to hypergravity https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.2141

トノサマバッタを過重力に晒してみる

トノサマバッタ
トノサマバッタ / Credit: canva

あらゆる動植物は、ふつうとは異なる重力環境に晒されることで体のシステムを変化させます。

自然下における地球の重力は1Gですが、例えば、植物はそれ以上のGに晒されると幹を太くすることが分かっています。

反対に、私たちヒトは国際宇宙ステーションの微小重力下にいると、筋肉量や骨密度が低下してしまいます。

一方で、節足動物を主とする生物たちはヒトのような骨を持っていません。

彼らの体はクチクラ(cuticula)」という表皮の硬い外骨格によって支えられています。

実はこれまで、このクチクラの外骨格が重力の変化にどう反応するかは分かっていませんでした。

そこで研究チームは今回、飼育や繁殖が容易なトノサマバッタ(学名:Locusta migratoria)」を対象に、奇抜な実験を行うことにしました。

遠心分離機でGを高める

実験で使用したのは、回転の遠心力によって過重力を発生させられる「遠心分離機」です。

遠心分離機は通常、液体の混合物をすばやく沈降・分離させるために使われています。

例えば、混合物の中の比重の重い固形物は自然下の1Gでも沈降しますが、時間がかかりすぎます。

しかし遠心力を使えば、より強いGが発生するため、短い時間で液体と固形物を分離することが可能です。

チームは、トノサマバッタの飼育ケースを取り付けた特注の遠心分離機を作成し、3G・5G・8Gの過重力空間を作り出しました。

トノサマバッタを入れた遠心分離機
トノサマバッタを入れた遠心分離機 / Credit: Karen Stamm et al., Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(2023)

では、通常の1Gと比べて、それぞれの過重力で飼育されたバッタにはどんな変化が起きたでしょうか?

その結果を次に見ていきます。

次ページバッタは3Gで最強になった!

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