トノサマバッタを過重力に晒してみる
あらゆる動植物は、ふつうとは異なる重力環境に晒されることで体のシステムを変化させます。
自然下における地球の重力は1Gですが、例えば、植物はそれ以上のGに晒されると幹を太くすることが分かっています。
反対に、私たちヒトは国際宇宙ステーションの微小重力下にいると、筋肉量や骨密度が低下してしまいます。
一方で、節足動物を主とする生物たちはヒトのような骨を持っていません。
彼らの体は「クチクラ(cuticula)」という表皮の硬い外骨格によって支えられています。
実はこれまで、このクチクラの外骨格が重力の変化にどう反応するかは分かっていませんでした。
そこで研究チームは今回、飼育や繁殖が容易な「トノサマバッタ(学名:Locusta migratoria)」を対象に、奇抜な実験を行うことにしました。
遠心分離機でGを高める
実験で使用したのは、回転の遠心力によって過重力を発生させられる「遠心分離機」です。
遠心分離機は通常、液体の混合物をすばやく沈降・分離させるために使われています。
例えば、混合物の中の比重の重い固形物は自然下の1Gでも沈降しますが、時間がかかりすぎます。
しかし遠心力を使えば、より強いGが発生するため、短い時間で液体と固形物を分離することが可能です。
チームは、トノサマバッタの飼育ケースを取り付けた特注の遠心分離機を作成し、3G・5G・8Gの過重力空間を作り出しました。
では、通常の1Gと比べて、それぞれの過重力で飼育されたバッタにはどんな変化が起きたでしょうか?
その結果を次に見ていきます。