「名前が人生に影響を与える」という仮説
自分の名前の文字は、「見る」「書く」「読む」「聞く」のいずれにしても使用頻度が高くなります。
私たちは自分の名前を呼ばれて育ち、自己紹介の際に使用し続けます。
自分の名前は、生まれてからいつの間にか、「単なる文字列」ではなく「自分の存在を瞬時に関連付ける愛着のある名称」になります。
では、使用頻度の高い自分の名前が、自分の性格や住む場所、職業などに影響を与えることはあるのでしょうか。
「座右の銘」を頭の中で繰り返したり、その言葉を壁に貼ったりして、自分の人生に影響を与えようとする人はいます。
そのことを考えると、同じくひたすら繰り返される自分の名前も人生に影響を与えるかもしれません。
一方で、「馬鹿馬鹿しい。いくら見慣れているとは言え、自分の人生が、名前に影響されるわけ無いだろう」と考える人もいるでしょう。
確かにその考え方も最もです。
問題は、現実の人々を見たときに実際に偏りがあるのかどうかという点です。
ちなみに、「名前が人生の選択に影響を与える」という仮説は「主格決定論(Nominative determinism)」と呼ばれています。
そして、この仮説に対しては以前から議論がなされてきました。
例えばそのような議論では、医者の名前が「Dr. Heal(「治す」の意)」である場合など、名前と職業が一致している例がしばしば取り上げられます。
研究者たちは、こうした一致や関連性が偶然なのか、それとも統計的に有意なのか探ってきましたが、一部の研究は説を立証し、別の研究では否定されるという状況が続いていました。
そこで今回、ユタ大学のチャタジー氏ら研究チームは、新たな手法でこの仮説を検証することにしたのです。