「ママ、ママ」チンパンジーが人の言葉を発音!
SF映画の名作『猿の惑星』では、知能の発達した類人猿と人間の立場が逆転し、チンパンジーやゴリラが人々を支配するというストーリーが展開されます。
その中でも2011年から始まったリブートシリーズの第一作『猿の惑星 : 創世記』では、シーザーというチンパンジーが横暴な人間に対して「ノー!」と英語で雄叫びをあげるシーンが描かれていました。
ただ劇中の類人猿たちはアルツハイマー治療用の「ALZ112」という試験薬によって知能が発達したという設定です。
しかし、私たち人間はサルから進化しながら複雑な言語を実際に操っています。となるとサルたちにも言語を扱うための初歩的な能力があっても不思議はありません。
ではなぜヒトだけが複雑な言語を話せるようになったのでしょうか。
チンパンジーやオランウータンなど、一部の類人猿は単純な鳴き声による音声コミュニケーションを発達させていますが、私たちのように言語を発音することはありません。
それについて研究者らは、類人猿に音声言語を発音するための生理学的システム(喉や舌、唇の動き)がないか、あるいは音声言語を発するための脳の神経回路がないことに原因があるのではないかと考えてきました。
ただ、これらの主張に証拠があるわけではありません。
そこで反対に「類人猿には初歩的なレベルではあるものの、人間の言葉を発音する能力がある」と考える研究者たちもいます。
今回の研究チームもその可能性を探るために、ヒト言語を話している類人猿の映像を過去のアーカイヴから探しました。
その結果、チンパンジーが初歩的なヒト言語を発音できることを証明する3つのビデオが発見されたのです。
ここではそのうちの2つが紹介されています。
まず1つ目は、米フロリダ州にあるサンコースト霊長類保護区で飼育されていた「ジョニー(Johnny)」というオスのチンパンジーによるものです。
ジョニーは飼育員の女性から「ママって言える?」と聞かれたのちに、「ママ、ママ…」と何度も発音しています。
実際の映像がこちら。
驚いたことにジョニーは私たちと同じ発音で「ママ」と言っているように聞こえます。(調べによると、ジョニーは2007年に他界しています)
さらにチームは、イタリアで飼育されていた「レナータ(Renata)」というメスのチンパンジーが同様に「ママ」と発音しているビデオも発見しました。
この映像は1962年に公開された『『Now Hear This! Italians Unveil Talking Chimp』というユニバーサル・スタジオのニュースリールの一つだといいます。
レナータが「ママ」と話すシーンは30秒あたりからご覧いただけます。
この他の映像も通じて、チームはチンパンジーが「ママ」「パパ」「コップ」という初歩的な単語を発音できることを確認しました。
研究者はこれを受けて、「一部の類人猿には適切な状況下でヒトの言語を発音できる能力があることを示唆している」と述べています。
これと別にチームは、公平な立場の参加者がチンパンジーの発音をちゃんと聞き分けられるかどうかを検証する実験も行いました。