宇宙空間の核兵器は敵を熱するだけ?
SF作品などでは、地球に降下してきたエイリアン軍に向けて人類側が「核ミサイル」を発射するシーンが描かれます。
現在の人類にとって核は最強の兵器の代名詞でもあり、物語によっては都市住民を犠牲にした核攻撃により、敵地上軍の侵攻を食い止めるシーンなども描かれます。
あるいは、全く効果がなく、絶望が加速する演出にもつながります。
地上での核使用はSFにとって、ある意味でハイライトであり、その後の物語の流れを変える重要な要素になり得ます。
しかし舞台が地上ではなく宇宙になると、核兵器に当たるスポットライトの数は急減します。
さらに物知り顔の観客の中には「宇宙で核なんて意味ない」という人も出てきます。
この言葉はある意味では真実です。
地上で核兵器が絶大な破壊力を誇るのは、空気による衝撃波によるところが大きいからです。
空気がない宇宙空間では、敵をなぎ倒すような衝撃波はうまれず、発生するのは熱や放射線などに限定されてしまいます。
そのため「小惑星を核ミサイルで攻撃し、軌道を逸らして地球を救う」という比較的現実的な計画についても、懐疑的な声が多くみられます。
専門家レベルの知識を持つ人でも「小惑星に核を打ち込んでも表面を少し焦がすだけだ」と言う人もいます。
ですが何事もやってみないとわかりません。
そこで今回、サンディア国立研究所の研究者たちは、小惑星に対する熱や放射線の効果を確かめることにしました。
調査にあたってはまず、下の図のように、放射線の照射機と小惑星を模した石英とシリカの小石が用意されました。
図の左側から発射された強力なX線が真空を通って、ターゲット位置に固定された小石に照射されるのです。
また実験装置には速度計も備えつけられ、小石が動いた場合には移動速度も調べられるようになっていました。
もし懐疑派が正しければ、小石は表面を熱されただけで元の位置から動かないでしょう。
それはつまり、核兵器では小惑星の軌道を逸らせないことを意味します。
一方、もし小石がとんでもない速度で右側に飛んでいけば、核兵器などの放つ放射線や熱が小惑星の軌道を逸らす効果を持ち得ることを示します。
実験の準備が整うと、研究者たちはスイッチを入れました。
すると、予想を遥かに上回る結果が起こりました。