「線路の隙間にソーラーパネルを設置する」というアイデア
世界中の線路の間には、100万km2以上のスぺースがあり、ヨーロッパだけを見ても、26万km2以上のスペースがあります。
2021年以来、Sun-Ways社は、この線路の隙間を有効活用し、ソーラーパネルを設置して電力を生み出すプロジェクトを推し進めてきました。
なぜなら、線路の隙間は、ソーラーパネルを設置するのに非常に適した場所だからです。
まず、すべての線路において電車がその上を通るのはほんの一瞬であり、設置されたソーラーパネルには絶えず太陽光が降り注ぎます。
また設置も非常に簡単です。
ほぼすべての線路で、レールとレールの間の幅は一定であり、それらの上を列車が通過しても問題ないほど安定した土台が備わっています。
この隙間に設置される各パネルは、1m×1.7mの大きさであり、一般的なレールの間に収まるよう設計されています。
パネルの設置はエンジニアの手作業でも行えますが、Sun-Ways社は線路の上を走る設置用マシンも開発済みであり、これを利用するなら、1日あたり最大1kmものパネルを設置できます。
そして、スイスの線路5000kmにこのソーラーパネルを設置できるなら、年間1TWhのエネルギーを生成できると考えられています。
Sun-Ways社によれば、このエネルギー量は、スイスの公共交通機関のほぼ3分の1の電力需要を満たすものであり、年間20万トン以上のCO2の削減にも繋がります。
また、このソーラーパネルは専用マシンを利用して簡単に取り外すことが可能であり、線路のメンテナンスを阻害することはありません。
この線路のメンテナンスの際に、ソーラーパネルの掃除やチェック、メンテナンスを行うなら、多くの手間やコストを削減できるでしょう。
通常、ソーラーパネルのメンテナスには、遠く離れた設置場所へアクセスするためのインフラが必要となります。
しかし新しいアイデアでは、線路というインフラそのものが、ソーラーパネルの設置場所であるため、アクセスに余分な労力をかける必要がありません。
加えてパネルの清掃には、どれほど現実的かは分からないものの、「洗浄ブラシを装着した電車を走らせる」というアイデアもあります。
これらの要素を考えると、これまで私たちが見逃していた「線路の隙間」は、ソーラーパネルを設置するのに最適な場所なのかもしれません。
ちなみに、これらのパネルには、反射防止フィルター付きの「フルブラックパネル」が採用されており、電車の運転手の目が眩むリスクが低減されています。
また専門家の報告によると、電車が時速150kmで走行したり、パネルが時速240kmの風にさらされたりしても、問題なく機能するようです。
そしてSun-Ways社によると、この方法で生成された電力は、鉄道のインフラ(スイッチ、信号、駅)や、電車そのものを動かすために使用したり、近くの地域で利用するために送電したりできるようです。
この新しいシステムは、2025年に、スイスのヌーシャテル州ビュット駅近くの線路の100mを使用して試験運用を行うことが決まっています。
さらに、別の地域では、私有線路1500mを使用したテストも開始されます。
これらのテストの結果次第では、今後、「線路の隙間」が、「家の屋根」や「農地・山岳地帯」と同じくらいメジャーな設置場所になっていくのかもしれません。