カフェイン摂取の効果は1日コーヒ―2杯以上?
この研究では、ADやMCIに対するカフェイン摂取量の影響がどう出るかを統計的に調べました。
研究者たちは、多変量のデータの特徴を要約する方法である、多変量解析を使って結果を分析し、特にカフェイン摂取量が認知状態とどう関わるかを探ろうとしています。
263人の参加者は、「MCIで認知症のリスクが高くないnaMCIの患者」、「認知症に進行するリスクがあるaMCIの患者」、そして「既にADと診断された患者」の3つのグループに分けられました。
それぞれのデータを比較し、MCIやADとの関連が見られる要因を調査しました。
そして今回の研究では、カフェインの摂取量を「低摂取(216mg/日以下)」と「高摂取(216mg/日超)」に分けて検証しています。
この基準値の216mgは、1日のドリップコーヒー約2杯分のカフェインに相当します。
摂取量が少ない人は、記憶障害のリスクが高くなる傾向が見られました。
具体的には、naMCIの患者のうちカフェインの低摂取者は、認知症の初期段階であるaMCIへ進行するリスクが有意に高かったのです。
この結果から、毎日のカフェイン量が多いと、ADやMCIの進行を抑える可能性が示唆されました。
但し、カフェインがどれほどの効果を持つかは簡単に言い切れません。
参加者全体のカフェイン摂取量とBMI(ボディマス指数)などの体格データには有意な差がなく、また認知機能の低下が進んでいるADの段階に入るまでの進行スピードには、カフェイン摂取量による影響はほぼないことが確認されました。
また、この研究では特に「アポリポタンパク質E(APOE ε4)」という遺伝子の型や、年齢、性別、教育レベル、喫煙の有無といった因子が、カフェインと認知機能の関係にどう影響するかも調べています。
すると驚くべきことに、カフェインを控える人は、aMCIに進行するリスクが2.72倍も高くなるという関連が見つかりました。
このような分析によって、「カフェインが記憶や思考の健康を守る一助となるのではないか」という仮説が生まれています。