カフェイン摂取の比較調査
カフェインに関する8年にわたる長期調査では、50歳から71歳までの人を追跡し、コーヒーの摂取量と死亡率の関係を調べたところ、カフェインの摂取が健康維持に役立つ可能性が確認されています。
また、カフェインが一時的に記憶や警戒心を高め、認知機能をサポートすることも明らかになってきました。
さらに、AD(アルツハイマー病)の動物モデルの実験では、カフェインが脳の異常タンパク質の蓄積を遅らせる作用があるかもしれないとされています。
但し、実際のADや認知障害の患者たちでカフェインがどれほどの効果があるかはまだ完全には解明されていません。
そこで今回のLNCによる研究では、AD(アルツハイマー病)やMCI(軽度認知障害)の263名の患者を対象に、コーヒーを含む日常的なカフェイン摂取と脳内の異常タンパク質の関係を確認し、カフェインが脳にとって本当に防衛策となるのかを探っています。
この研究は、2010年から開始され、ADやMCIの患者の集団に対してカフェインの摂取と脳の変化の関連性を調べるための長期追跡調査です。
フランス国内の23の施設が協力し、現在も3年間の追跡調査を行っています。
この調査の参加者やその家族は、事前に調査内容の説明を受け、同意をした上で参加しました。
この調査の参加者は、45歳以上で介護者がいるAD患者と、70歳以上でMCIの診断を受けた患者です。
参加者は、脳に影響を与える他の疾患を持たない患者が選ばれており、認知力の低下がADに由来するものかを確かめるため、様々な評価が行われました。
参加者全員は、MRI(核磁気共鳴画像法)での脳の検査や、統一された認知テストも受けています。
これにより、脳の活動の様子や認知力の状態が一貫した方法で確認されています。
MCIの参加者はさらに、「記憶の障害が見られるタイプ(aMCI)の患者」と「記憶の障害が見られないタイプ(naMCI)の患者」に分類されました。
この調査では、カフェインの習慣的な摂取量も重要な要素として記録されました。
263人の参加者は、コーヒー、紅茶、チョコレートなどに含まれるカフェインの摂取量を1日の平均で自己申告し、中央値である216mg/日を基準に「低カフェイン群」と「高カフェイン群」に分けられました。
この分け方によって、カフェインが脳の健康に与える影響をさらに詳しく分析できるようになります。
因みにコーヒー1杯(約150〜180ml)に含まれるカフェインの量は、およそ 80〜120mg です。
但し、これはコーヒーの種類や抽出方法によって異なり、エスプレッソには1杯あたり約60〜80mgのカフェインが含まれるのに対し、ドリップコーヒーは1杯あたり約100〜150mgのカフェインを含んでいます。
また、紅茶一杯分は約30 mg、チョコレートはカカオの含有量によって約14~42 mgのカフェインが含まれています。
したがって、この調査の基準量は、ドリップコーヒー約2杯分に相当することになります。
この研究では、参加者の脳と血液から採取したサンプルを用いて、脳内の異常タンパク質である「アミロイドβ」のレベルを測定しました。
これらはADの進行に関わるとされる物質であり、血液や脳脊髄液(CSF)中での量を調べることで、カフェインの摂取がこれらの物質の蓄積に与える影響を探っています。
採取されたサンプルは、特別な保管チューブに分けられ、冷凍保存されました。
これにより、サンプルが劣化せず、信頼性の高いデータが得られます。
この調査に基づき、日常的なカフェイン摂取と異常タンパク質の蓄積との関連性が明らかになるかどうかを評価します。