新たな3つ目の「ダンサー」とは?
ダンサーは先行研究で予想こそされていたものの、被験者数が少な過ぎたせいで、その存在を確かめることはできていませんでした。
では、ダンサーとは具体的にどのようなタイプを指すのでしょうか?
研究主任の一人であるペリー・ザーン(Perry Zurn)氏の言葉を借りると「ダンサーはあらゆる分野のトピックの間を創造性を持って移動する人」だといいます。
少しわかりにくいので、もっと噛み砕いて説明してみましょう。
ダンサーは一見すると、ビジーボディと似て、異なる分野を自由に移動して調べているように見えます。
ところがダンサータイプは独自の視点で、トピック間の繋がりを見つけて、直感的で跳躍的に検索項目を見出しています。
このタイプは例えば「ブラックホール」から「魔王・悪魔」、さらに「超能力」など、自身の創造性に従って直接は関係しないトピックへ自由に移動するような閲覧を行います。
ザーン氏はダンサーについて「彼らは決してトピック間をランダムにジャンプしているのではなく、新しい何かを作るために異なる分野を創造的に接続しているのです」と話しました。
閲覧タイプは「文化圏の違い」によって傾向がある
また興味深いことに、ウィキペディアの閲覧スタイルには、文化圏によって一定の傾向が見られることもわかりました。
具体的には、教育やジェンダーの点で不平等が大きい国では、より焦点を絞った調べ物をするハンタースタイルが多く見られ、反対に、教育水準が高く、男女平等が行き届いている国では、あらゆる分野を自由に行き来するビジーボディが多く見られたというのです。
これについて研究者らは正確な答えを見つけていませんが、次のような仮説を立てています。
それによると、教育水準が低く、男女平等の格差が大きい国では伝統的な価値観が根強く、学業や職業選択が狭い範囲に限定され、それが多くの人々の情報収集の仕方を制約している可能性が高いというものです。
こうした文化圏では、個々人が趣味や旅行など、いろいろな分野に興味関心を向ける余裕がないために、ウィキペディアの閲覧もハンター的なスタイルに近づいているのかもしれません。
対照的に、教育水準が高く、男女平等が行き届いた国では、個々人の学業や職業、趣味や娯楽の選択肢が多様に開かれているため、いろいろなトピックに興味を持ち、自由に調べるビジーボディが多くなりやすいと研究者たちは考えています。
もちろん研究者が述べているような傾向以外にも、もしかしたら日本では、「薬になる植物」から「中国の王朝」や「宦官」に興味が移る人がたくさんいてダンサーが多いと判定されることもあるかもしれないので、その国のそのときの流行りや文化によって、スタイルが左右される可能性もあるかもしれません。
いずれにせよこの研究の結果は、ウィキペディアの閲覧を通して、人々にはさまざまな好奇心のスタイルがあることを指し示したものであり、どのスタイルが優れていて、どのスタイルが劣っているというような話ではありません。
ここで得られた知見は、人々の関心の持ち方、引いては教育分野における児童や学生、研修生たちの個性に合わせた最適な学習スタイルを提案するために役立つと考えられています。
例えば、ビジーボディの人はあらゆる分野に興味が向きやすいので、1つの専門分野に凝り固まった授業よりも、分野間をまたいで様々な例え話や雑学を混じえた授業によってより成績が良くなるかもしれません。
反対に、ハンターの人は例え話や雑学を挟まれると「話がアッチコッチいってよく分からん…」となる可能性があるので、少し硬めでも、一本筋の通った授業の方が性に合うかもしれません。
実際、自分の場合は学校でこうやって教えてもらえればもっと成績が伸びたかもしれないのに、と感じる人は多いでしょう。
このように、個々人の好奇心のスタイルを知ることは学習効率を向上させ、教育の現場で学生たちが自分に合わせて学ぶための方法を議論する際にも役立つと期待されています。
あたかも男女平等が行き届いた国は教育水準が高く、逆も然りと言いたげで、思想がリベラルに傾倒している様子が見受けられますね。スタイルの優劣について話しているのではないと、取ってつけたように書いていますが、教育水準の優劣を前提に話をしておいてこんなことを言うのは、若干奇妙で読む人を小馬鹿にしているように思えます。