ウィキペディアの閲覧スタイル:「ビジーボディ」と「ハンター」
研究チームは世界50の国と地域(全部で14言語)における48万2760名のウィキペディアユーザーを対象に、ウィキペディアの閲覧データを収集しました。
調査は2022年3月と10月に実施され、被験者がどのような目的でウィキペディアを使っているかを調べています。
同チームは2020年にも同様の調査を行っていますが、その際は149名という限られた英語話者のみを対象としていました。
今回は被験者数や国、使用言語において、それとは比べ物にならないほどの大規模調査となっています。
そして収集されたデータを分析した結果、ウィキペディアユーザーの閲覧スタイルは大きく3つに分けられることが示されました。
まず1つ目のスタイルは「ビジーボディ(Busybody)」です。
ビジーボディとは、英語で「詮索好き」とか「何でも首をつっこむ好奇心旺盛な人」を意味する言葉で、ウィキペディアの閲覧においては、気になったトピックの関連項目を幅広く調べるスタイルを指します。
このタイプは例えば、「ブラックホール」について調べていたのに、この話題から望遠鏡の歴史に興味が移り、最初に望遠鏡を作った天文学者のエピソードから、今度は地動説や当時の宗教問題へと興味が移っていってしまうなど、解説中に出てきた付属的な情報が気になってもともと調べていたこととはあまり関係ないトピックにどんどん関心が移ってしまいます。
ビジーボディはとにかく気になったことを次々に調べるためにウィキペディアを使う情報散策スタイルといえるでしょう。
続く2つ目は「ハンター(Hunter)」です。
ハンターはビジーボディとは対照的に、確固とした目的に沿ってピンポイントに調べたい事柄を狙い撃ちするスタイルを指します。
ビジーボディは、関連のある幅広いトピックを次々と調べるスタイルでしたが、ハンターは自分が抱えている知識のギャップを埋めるために意識して特定の情報だけを収集をします。
このタイプは例えば、「ブラックホール」とは何かを調べると、次にその理論を支える「相対性理論」を調べ、次に相対性理論と深く関わる「重力場」や「アインシュタイン」など、理解するために重要な関連性のある事柄を数珠つなぎで調べていきます。
ビジーボディと似たように見えますが実際は1つの事柄の理解のために新たなトピックを検索しており、調べ方に一貫性があります。
一方で、ビジーボディとハンターは前回の調査でも十分に明らかになっていたウィキペディアの閲覧スタイルでした。
しかし今回最も重要な発見となったのは、3つ目のスタイルである「ダンサー(Dancer)」が確認されたことです。