恋愛は「したいからする」のか、「しなきゃいけないからする」のか?
恋愛はごく個人的な感情に見えますが、実際には社会的な影響を大きく受けています。
たとえば「そろそろ誰かと付き合わないと」「恋人がいないのは恥ずかしい」といった焦りにかられた経験はないでしょうか。恋愛したいという気持ちの裏には、人によってさまざまな理由があるものです。
この「恋愛をしたい理由」の違いが、その後の恋愛の行方に関係しているかもしれない。そんな着想から今回の研究は始まりました。
今回の研究チームは、「なぜ人は恋愛を求めるのか」という問いを出発点に、誰にでも当てはまりそうな動機を分類し、それが将来の恋愛行動や交際の成立にどう関わっているかを検証しました。
この研究で使われたのは、自己決定理論(Self-Determination Theory)という心理学の考え方です。これは、人の行動は「どのような気持ちでそれをやろうとしているか(=動機の質)」によって結果が変わるという理論で、教育や仕事、健康などさまざまな分野の調査で用いられてきました。
調査は2段階で行われました。まず第1段階(ベースライン調査)では、18歳から39歳の独身で恋人がいない成人約4,700人を対象にオンラインでアンケートを実施。
この段階では、「もし今、恋愛をしたいとしたら」という前提のもとで、「なぜ恋愛したいのか?」という動機についていくつかの理由が提示され、それぞれにどの程度当てはまるかを評価してもらいました。
このとき研究チームが用いたのが、「AMRPS」と呼ばれる6つの動機分類です。これは、恋愛を求める動機を内面から湧き出る自発的な気持ちから、外部の期待や不安に基づくものまで幅広く整理しています。
恋愛を求める6つの動機(AMRPSスケール)
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内発的動機:恋愛そのものが楽しいから、誰かと親しく過ごすのが好きだから
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同一化動機:恋愛は自分にとって大切で、人生にとって意味のあることだと感じている
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肯定的イントロジェクション:恋愛している自分は誇らしいと感じる、自信につながる
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否定的イントロジェクション:恋人がいないと恥ずかしい、自分に何か欠けている気がする
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外的動機:親や友人の期待に応えるため、周囲の評価を気にして
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無動機(アモチベーション):なぜ恋愛したいのかわからない、特に意味を感じない
これらは現実に多くの人が持ちうる恋愛の動機を体系的に整理したものです。
そして半年後、同じ参加者に再度アンケートを送り、「現在、恋人がいますか?」「この半年で交際が始まりましたか?」といった項目に答えてもらいました。
つまりこの研究は、今は恋人がいない人たちが、どんな理由で恋愛を望んでいたか、そしてその気持ちが半年後の交際の有無とどう関係していたかを追跡した、縦断的な調査です。