終わりまでの残り時間を測る発想

どんなに仲の良いカップルでも、「昔に比べて最近ちょっと物足りないな」と感じる瞬間はあるでしょう。
最初のころは、相手のどんな些細な言葉や行動にもワクワクしたのに、いつの間にかそれが当たり前になり、ドキドキ感が薄れてしまう。
実際、多くの恋愛関係では、付き合い始めの高い満足度が次第に落ち着いていくという傾向がよく見られます。
でも、その満足度の低下は誰にでも起こることで、「普通のこと」と見過ごしてしまいがちです。
問題は、その「普通の低下」が、いつ「決定的な破局」につながるほどの深刻なものになるのかがはっきりしていないという点です。
これまでの多くの研究は、恋愛満足度を「付き合い始めてからどのくらい経ったか」という時間軸で分析してきました。
例えば、「交際3年目でマンネリ化が起きやすい」といった具合です。
しかし、このような考え方だけでは、本当に関係が終わるときの微妙な変化をうまくとらえきれません。
今回の研究チームはそこで発想を大きく変えて、「別れまであとどれくらい残っているのか」という「残り時間」に注目することにしました。
この考え方は、心理学の別分野である老年心理学からヒントを得ています。
老年心理学とは何か?
老年心理学とは、人が年齢を重ねるにつれて、心や感情、行動がどのように変化していくのかを研究する心理学の一分野です。特に、高齢期に見られる心の変化や、それが生活や人間関係に与える影響を詳しく調べます。今回の恋愛関係の研究でも使われた「ターミナル・ディクライン(終末期低下)」という概念は、この老年心理学から生まれたものです。この「終末期低下」とは、人生の終わりが近づくにつれて、幸福感や生活満足度、さらには認知能力までもが急激に下がる現象を指します。もともとは、高齢者の心身の変化を捉えるための理論ですが、最近ではそれ以外の分野でも応用されています。恋愛関係の研究者たちは、これにヒントを得て、恋愛の「終わり」にも似たような急激な心理的な変化があるのではないかと考えたのです。つまり老年心理学は、年齢を重ねた人の研究にとどまらず、さまざまな人生の変化における心理的パターンを探る上でも重要な役割を果たしているのです。
老年心理学では、「人の幸福感や生活満足度は死を迎える数年前から急激に低下する」という現象(ターミナル・ディクライン、終末期低下)が知られています。
これを恋愛関係にあてはめてみると、別れる少し前からカップルの満足度も急激に下がるのではないかと考えたのです。
すると非常に興味深いパターンが浮かび上がってきました。