今すぐできる破局リスク回避

今回の研究によって、恋愛関係が終わりに向かう典型的なパターンが初めて明確に示されました。
それは「ゆるやかな侵食の後、別れの約1~2年前頃から満足度が急降下する」という二段階のプロセスです。
この発見は、「別れ話が出る前からすでに関係の破綻は始まっている」ことをデータで裏付けるものです。
実際、「最近うまくいっていない」と感じつつも関係を続けているカップルでは、知らぬ間に別れへのカウントダウンが進行している可能性があります。
急激な満足度低下(ターミナル期)に差し掛かるとき、カップルの間では何が起きているのでしょうか。
その時期には、口論が増えたり、心の距離が一気に開いたり、関係修復の努力がもはや実を結ばなくなったりしているのかもしれません。
研究者は、終盤の満足度急落期には『否定的な会話の繰り返し、相手に対する敵意、争いが増えること』が原因となっている可能性を指摘しています。
言い換えれば、関係の中で見えない決壊が起こり、「もうダメかもしれない」という感覚が現実味を帯びてくる段階と言えそうです。
また、別れを切り出す側と切り出される側のタイムラグにも注目すべきです。
経験的にも、「振る側」は前々から気持ちが冷めていて「振られる側」は突然別れを告げられて驚く、といった話はよく聞かれます。
今回の結果はまさにそれを裏付けました。
イニシエーター(振る側)は早い段階から心が離れ始め、レシーバー(振られる側)は直前まで深刻さに気づきにくい傾向があるのです。
レシーバーの満足度が最後に急落するのは、「何かおかしい」とようやく気づいた時には関係修復が難しい段階に至っていることを示しているのかもしれません。
この心のタイムラグは、当事者同士の認識のズレとしてしばしば悲劇的です。
片方にとっては「もうとっくに終わっていた関係」でも、もう片方にとっては「突然崩れ落ちた世界」というギャップが生じるからです。
では、この知見は私たちに何をもたらすでしょうか。
まず、「終わりのサイン」にもっと早く気づくことの重要性が挙げられます。
満足度がゆるやかとはいえ下降し続けているなら、それは将来の急落(破局)への予兆かもしれません。
もしお互いがその兆候に気づき、プレ終末期の段階で問題解決に取り組めれば、関係を修復したり軌道修正したりするチャンスがあるでしょう。
研究者たちも、このプレ終末期にタイムリーな介入(例えばカップルカウンセリングや真剣な話し合い)を行えば、破局を防げる可能性があると示唆しています。
逆に言えば、ゆるやかな不満を放置して「満足度が最大値のおよそ65%」水準に突入してしまうと、関係修復が非常に困難になることを今回のパターンは示唆しています。
もちろん、このパターンが当てはまる度合いはカップルごとに異なります。
例えば「満足度が最大値のおよそ65%まで低下すると別れを選ぶ」という数値も統計的な値にすぎず、あるカップルにとってはもっと高い満足度でも別れを選ぶかもしれませんし、逆に相当低くなっても関係を維持するケースもあるでしょう。
本研究はあくまで平均的な傾向を示したものであり、「我が家の場合の65%は何だろう」と機械的に考える必要はありません。
ただ、「多少の満足度低下なら普通だけど、大幅な低下には要注意」というメッセージとして受け止めることは有意義でしょう。
実際、「関係満足度のどれくらいの低下なら健全な範囲で、どれくらい低下すると決定的にまずいのか」を科学的に数量化した意義は大きいと指摘する声もあります。
また、今回分析に使われたデータはすべて欧米諸国のものであり、文化や社会的背景が異なる地域で同じパターンが当てはまるかは注意が必要です。
結婚や交際に対する価値観、別れに踏み切るハードルは文化によって違う可能性があるからです。
またデータは年1回程度の自己報告に基づくため、もう少しきめ細かな心情の揺れを捉えられていないかもしれません。
今後は月次の詳細な追跡や、異文化圏での研究によって、この「終わりのパターン」が普遍的なものかを確かめる必要があるでしょう。
恋愛の「終わりパターン」が明らかになったことで、一見ロマンチックとは程遠い冷静なデータが、私たちの心の動きを映し出していることに気付かされます。
愛情という主観的なものにも統計的な傾向が潜んでいるとは驚きですが、だからこそそのサインを見逃さず、早めに対処することが可能になるかもしれません。
関係に違和感を覚えたとき、それは単なる気のせいではなく「プレ終末期」の警告なのかもしれないのです。
少し耳の痛い研究結果ではありますが、「終わりのカウントダウン」を意識することで逆に関係修復の糸口をつかめる可能性もあります。
今回の知見が、多くの人々にとってより良いパートナーシップを築くヒントとなることを期待したいです。
始まりがあれば終わりもあるので、終わりはかならず来るのだということを常に念頭に置いて備えておけばいいだけでしょう。
常に次を見ておけということです。
プランBのご用意をお忘れなく。
この記事は凄く漠然とした事しか書いてないけど、この手の話が好きな人にはタラパーカーポープ「夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか」お勧めです。日本人著書と違ってデータが豊富。因みにその邦題の理由は男の方が長期的ストレス耐性が高いから(すぐにやり返さなくてもいられるからある程度我慢する)。