AIは人間の能力を理解するのに役立つか?悪用の危険性も
最後の実験では、人間の審査団がオリジナルの環境音を聞き、「それを元にAIが生成した画像」と「無関係の風景を撮影した画像2枚」の中から、環境音と対応している画像を選ぶよう指示されました。
その結果、審査団は、80%の確率でAIが生成した画像を選択しました。
この結果は、環境音を聞いた時の人間の予測とAIの予測が似ていることを示しています。
研究チームも、「音から情景を思い描く能力は人間特有のものですが、この実験結果は、AIが人間の感覚能力に近づく可能性を示している」と述べています。
このAIは、単に事件の捜査などに使用できるだけではありません。
AIの予測能力は、私たち人間が持つ「環境音から風景を予測する能力」に近く、AIの研究を続けることで、人間特有の能力を理解するのに役立つ可能性があるのです。
今後研究チームは、人間特有の能力をもっと深く理解したり、AIでより正確に再現したりしたいと考えています。
しかし、懸念点もあります。
この壮大な目的が果たされる前に、悪用される恐れがあります。
ネット上には限られた情報だけで住所を特定してしまう恐ろしい人々(いわゆる「特定班」)が潜んでいます。
例えば過去には、あるYouTuberの動画に鳥の鳴声が含まれており、特定の地域にしか生息しない鳥だったことから、住所特定に繋がったケースがありました。
もし、そうした特定班がこのAIを悪用したら、住所特定は一層簡単になることでしょう。
将来、「SNSにアップされた動画のちょっとした環境音から住所を特定する」なんてことも可能になるかもしれないのです。