1:生成AIが仕事に与えた影響

まず、各種調査が示す具体的な数字から、生成AIによるイラストレーターへの影響を見てみましょう。
米国:OpenAI・ペンシルベニア大の職業影響試算(2023年)
2023年3月、OpenAI社とペンシルベニア大学の研究者らが大規模言語モデル(LLM)の仕事への影響を推計しました。
この試算によると、米国労働者の約80 %が業務タスクの10 %以上で影響を受け、19 %は半数超のタスクで影響すると推計されました。
特に高学歴・高収入の職業ほど影響が大きいとされ、具体的にはライター・作家などライター系のクリエイティブ職が上位に挙げられました。
これは、生成AIがこれまで自動化が難しいと考えられていた創造的業務にも及ぶ潜在力があることを示しています
世界:ゴールドマン・サックスの自動化予測(2023年)
同じく2023年には、ゴールドマン・サックスが生成AIによる自動化の潜在性について分析しました。
その研究では、アート・デザイン・エンタメ・メディアなどクリエイティブ分野のタスクの約26%が高度な自動化が可能と試算されました。
これはクリエイティブ系も例外ではなく、生成AIは文章やビジュアルコンテンツを高度な水準で作り出せるため、従来人間が担ってきたクリエイティブ作業の約4分の1がAIに置き換わり得ると指摘されています
もっとも、この予測は「潜在的な可能性」であり、実際の雇用喪失とイコールではない点に留意が必要です。
世界:フリーランス市場データ分析 (2024年)
2024年発表の国際研究では、大手フリーランス仲介サイト上の約1年間(ChatGPT公開前後)の300万件超の求人データを分析し、生成AIが需要に与えた影響を調べました。
結果、単純なライティングや翻訳の仕事は大幅減少が確認されています。
例えばウェブサイトの「About Us」ページ執筆依頼は週平均求人件数がChatGPT公開後に50 %減、英語など西洋言語の翻訳は約30%減(他言語も約20%減)に落ち込むなど、文章作成や翻訳の需要が全体トレンドに比べ20~50%も低下しました。
特に短期契約や経験豊富なフリーランサーほど仕事減の影響を受けたことが指摘されています。