失業する絵師たちのリアルと衝撃のータ
失業する絵師たちのリアルと衝撃のータ / Credit:clip studio . 川勝康弘
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失業する絵師たちのリアルと衝撃のータ (2/5)

2025.05.23 17:00:23 Friday

前ページ1:生成AIが仕事に与えた影響

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2:イラストレーターたちの現場の声

2:イラストレーターたちの現場の声
2:イラストレーターたちの現場の声 / Credit:clip studio . 川勝康弘

調査データを裏付けるように、SNSやコミュニティでもイラストレーターたちの悲痛な声が多数投稿されています。

その一例が、今年話題になった「AIに仕事を奪われた絵師」のエピソードです。

あるフリーのイラストレーターは、コミッションサイトで細々と年間200件近い依頼をこなして生計を立てていましたが、生成AI(NovelAIやNijiJourney)の登場後に依頼がぱったり来なくなり、「これはもう無理だ」とイラストで食べていくことを諦めて再就職したといいます。

「AIの台頭で絵が売れなくなったので、絵で食べるのを諦めた」——まさに現実に起きている出来事です。

海外のクリエイターからも同様の報告があります。

Reddit上では「AIアートの登場後、アーティストの友人のコミッション(依頼)が目に見えて減った」というエピソードが共有されており、タイミング的にAIが原因と考えざるを得ない状況だと述べられています。

また、「10年以上続けたライターの仕事をChatGPTに奪われた」「クライアントは品質よりコストを選んだ」というライターの嘆きも投稿されており、文章分野でも似た構図が起きています。

こうした声は決して他人事ではなく、イラストレーターを含む多くのクリエイターに共通する不安を代弁していると言えるでしょう。

さらに、将来を見据えた深刻な不安感も広がっています。

ある調査ではイラストレーターの78%が「今後、自分の創作による収入が生成AIによって悪影響を受けるだろう」と考えていることがわかりました。

実際、SNS上でも「このままでは将来食べていけないのでは」「新人世代は情熱を失ってしまうのでは」という声が上がっています。

また「自分の作風が勝手にAIに真似されるのでは」という懸念や「AIの普及で人間の作品の価値が下がってしまう」という訴えも非常に多く、ある調査では86%以上のクリエイターがこうした点を強く懸念していると報告されています。

Reddit上ではゲーム業界のコンセプトアーティストが「AI登場前に比べて明らかに仕事の需要が減った」と嘆き、キャラクターデザインの案件激減によりキャリアの方向転換を検討していると明かしました。

インディーの依頼が中心だった彼は「クライアントがAIアートで済ませるケースが増え、自分を含めスタジオのアーティストにも影響が出ている」と述べています。

実際、大手企業が“AIアーティスト”やAI画像を管理するプロデューサーを募集し始めた例も出ており、クリエイターとして危機感を強めています。

具体的にはMeta、Netflix、Disney、Amazon Prime Video、Adobeなどの大企業が年収数十万ドルもの高額報酬でAIアートにかかわる人材を募集していることが確認されました。

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特にAI生成物を大量に回し、最適案を抽出する役割は上に上げたどの企業も欲しています。

高額報酬で専門家を囲い込みを行う意図が見えており、結果として外部クリエーターの受注機会は大幅に減少すると考えられます。

同様の声はアジア圏でも聞かれます。

生成AIの影響は中国でも顕在化しています。

中国ゲーム業界では2022年末以降、画像生成AIの活用が急速に広まり、フリーランスのゲームイラストレーターたちが仕事を奪われつつあると報じられました。

実例として、中国のフリーイラストレーターの一人はゲーム用プロモーション画像を1点描くごとに約3000~7000元(約5.8万~13.6万円)の報酬を得ていましたが、2023年2月以降こうしたイラスト制作の依頼が激減したと証言しています。

企業側は「AIで生成した画像の細部修正」だけを人間に任せるようになり、報酬も従来の10分の1程度にまで落ち込んでしまったとのことです。

また、重慶市のゲームスタジオではキャラクターデザイン担当のイラストレーター15人中5人が2023年に解雇されました。

これは同スタジオが画像生成AIを導入した影響と見られ、担当者は「今後は10人で行っていた仕事を2人でこなす可能性もある」とさらなる人員削減への不安を述べています。

このように、中国では実際にクリエイター職の削減や単価下落が生じており、ゲーム大手企業もAIで開発コスト削減を模索する動きを強めています。

中国のゲーム業界でゲーム用イラストを手掛けていた男性も「昨年末頃からAIの性能が大きく向上し、ゲーム会社からの注文が減って報酬も減った」と明かし、ついには仕事そのものが無くなってしまったといいます。

彼は「AI技術は1〜2年後にはさらに成長するでしょうから、別の仕事をやろうと思っています」と語り、業界からの撤退を決意しました。

中国メディアによると、ここ数ヶ月で彼のように職を失うイラストレーターが急増しているとのことです。

フリーのゲームイラストレーターであるアンバー・ユーさんも、2023年2月以降プロモーション用ビジュアルの依頼が激減したと証言しています。

彼女はかつて1枚あたり3000〜7000元(約5.8万〜13.6万円)の報酬を得て一週間かけて丁寧に描いていましたが、今では同様の絵がAIで数秒で生成できてしまいます。

結果、人間に任される仕事は「AIが作った絵の微修正」程度になり、報酬も以前の10分の1ほどに落ち込んでいるといいます。

次ページ3:創造性を評価しない業界側の問題点

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