「月光の特性」が白いフクロウを誕生させた
これまでの研究では、動物の体色や構造が主に捕食者と被食者の相互作用によって進化したとする考えが支配的でした。
この理論では、捕食者に見つかりにくい体色や、捕食成功率を上げる形態的特徴が自然選択の主要な駆動力とみなされてきました。
たとえば、捕食者は環境と同化するように暗色の体色を持ち、被食者はそれに対応する形で警告色や擬態を発展させる、といったものです。
一方で本研究は、捕食者と被食者の直接的な相互作用ではなく、環境光条件そのものが動物の体色の進化に与える影響を調べています。
具体的には、月明かりという特定の光環境が、メンフクロウの白い羽毛という目立つ特徴を進化させる上でどのように機能してきたのかを実証しました。
その結果はある意味で「月光の特性が白いフクロウを誕生させたと」言えるものでした。
従来の研究が暗闇や隠れる場所といった「遮蔽環境」の影響を強調してきたのに対し、本研究は、光が「背景との同化」を左右する能動的な要因であることを示しています。
例えば、月光の波長や強度がフクロウの羽毛の反射特性とどのように相互作用し、結果として捕食効率を最適化するのかという点は、動物と環境の関係性を進化生態学の新たな観点から捉え直す必要性を示しています。
またこの仕組みを理解することは、新しい芸術や舞台の視覚トリックの開発や、軍事分野での秘匿性の向上に役立つと期待されます。
(※人間にも光が「白い物体をぼやけさせる」という錯覚を引き起こすをことから、可能性は大いにあるります)
さらに、こうした環境光が選択圧として機能する場合、同様のメカニズムが他の動物にも普遍的に存在する可能性があります。
もしかしたら他にも白い体色を持つ夜行性動物や昼間の逆光条件で特定の波長に溶け込む体色を持つ動物にも同様の適応が見られるかもしれません。
この仮説を検証することで、光環境が動物の生態的特性に与える影響の普遍性を探ることができるでしょう。
もし今度ハリーポッターの映画を見ているときに、賢げな子供が白いフクロウをみて「白だと目立っちゃうんじゃない?」と尋ねたなら「闇ではなく光に溶け込む動物もいるんだよ」と教えてあげるといいかもしれません。
この研究も軍事に活かされるのでしょうか。恐ろしい世の中になりました。