ジェネリック医薬品はコスト競争で質が低下するリスクがある

研究チームはまず、医薬品の製造工場を特定するために「Structured Product Labeling」と呼ばれる公開データを活用しました。
通常、どの工場で薬が作られているかは情報公開が限られているのですが、このデータをうまく解析することで、同じ成分・用量・剤形(たとえば錠剤やカプセルなど)でありながら、アメリカ国内で製造されたものと、インドをはじめとする新興国で製造されたものを正確に区別できるようにしたのです。
次に研究者たちは、米国食品医薬品局(FDA)が運用する「FAERS(Adverse Event Reporting System)」という副作用報告のデータベースを利用しました。
これは、医師や患者などが実際に経験した副作用を記録する大規模なシステムです。
そこで特に「入院」「重度の障害」「死亡」といった深刻な結果をもたらす重篤な副作用に絞って、インド製ジェネリックとアメリカ製ジェネリックを比較しました。
今回の分析では合計2,443種類のジェネリック薬が対象となりましたが、そのうち新興国で製造されたジェネリックの大部分(約93%)がインド製だったため、事実上「インド製 vs. アメリカ製」の比較となりました。
そして同じ成分・同じ剤形・同じ用量の薬を厳密にマッチングした結果、インド製ジェネリックでは、アメリカ製ジェネリックに比べて重篤な副作用の報告数が約54%も多いことがわかったのです。
さらに興味深いのは、こうした差が特に「長く市場に出回っている(=成熟期)のジェネリック薬」で顕著に見られた点です。
販売開始から時間が経つほど薬の価格競争が激化し、コスト削減が優先されることで製造や品質管理に影響が及ぶ可能性が指摘されています。
研究チームはこれらの結果について、ジェネリック薬の「安全性や品質をめぐる常識」に改めて注意が必要だと結論づけています。
では、なぜこうした差が生まれるのでしょうか。
一つの要因として指摘されているのが「コスト競争」の激化です。
ジェネリック薬は、発売から時間が経つと価格がどんどん下がり、多くの企業がコストを削る努力をしなければ利益が確保しにくくなります。
結果として、品質管理の徹底や十分な検査体制にかけるリソースが限られ、製造環境に問題が起こりやすくなる可能性があります。
また、米国食品医薬品局(FDA)の工場検査方法にも違いがあります。
アメリカ国内の工場は抜き打ちでの検査が一般的なのに対し、海外工場では事前通知のうえ実施されることが多いため、検査準備の段階で問題点を隠せてしまうリスクが指摘されています。
それでは私たちはどうすればいいのでしょうか。
研究チームは、FDAをはじめとする規制当局が検査体制を厳格化し、海外でも抜き打ち検査を実施するなどの改善策を提言しています。
また、製薬会社や消費者への情報開示を進め、「どの国・どの工場で作られた薬なのか」を患者や医療機関が知ることができる仕組み作りが望まれます。
こうした透明性が高まれば、品質の高いジェネリックを選ぶことも可能になるでしょう。
もちろん、ジェネリック医薬品の利点が失われるわけではありません。
価格の低さによって多くの人が必要な治療を受けられるメリットは非常に大きいものです。
ただし、その安全性や品質が製造国やコスト圧力によって左右される可能性が明らかになった今、私たちは「安いから同じ」と思い込み過ぎるのではなく、必要に応じて医師や薬剤師に相談しながら最適な治療を選んでいくことが大切だと言えます。
>ジェネリック薬は、発売から時間が経つと価格がどんどん下がり、多くの企業がコストを削る努力をしなければ利益が確保しにくくなります。
これは嘘ですよ。
「特許が切れた先発薬」も、安い「ジェネリック薬」に対抗するように価格を下げないと商売が成り立たなくなるのだから、「コストを削る努力をしなければ利益が確保しにくくなる」のは「先発薬」メーカーも「ジェネリック薬」メーカーも同じ事です。つまり「先発薬」メーカーだって本来必要なコストを捻出できず品質が悪い薬を販売してしまう可能性はあるわけです。
そこが本来の重要な点であるはずなのにそれを論じないで「ジェネリック薬メーカー”だけ”が品質が悪い薬を販売してしまう可能性がある」という論調にするのはおかしな話です。
何を今更な記事。
こんなの日本でジェネリックが解禁された当初から指摘されてた事だよ。