驚異的な硬度と高温安定性

今回合成された六方晶ダイヤモンドの大きな特長は、「天然ダイヤモンドを上回る硬度」と「高温環境下での安定性」という2点に凝縮されます。
そもそも天然ダイヤモンドの硬度は、ヴィッカース硬度で70~110 GPaほどとされていますが、六方晶ダイヤモンドでは155 GPaという値が報告され、理論的に想定されていた“さらなる硬さ”を実証する結果となりました。
炭素原子が六角形の格子構造をとることで、立方晶に比べてわずかに強固な結合を形成できるのが理由だと考えられています。
また、熱に対しても驚くほど高い安定性を示すことが今回の合成ダイヤモンドを際立たせています。
通常の天然ダイヤモンドは、真空などの特殊環境では比較的高温にも耐えられますが、大気中で扱う場合には900℃程度を超えると分解や酸化が進みやすくなるといわれています。
対して、合成された六方晶ダイヤモンドでは1,100℃まで結晶構造を保ったという報告がなされており、産業上の高温プロセスにそのまま応用できる可能性も高まっています。
このような高い硬度と熱安定性の組み合わせは、切削・研磨工具などの従来用途にとどまらず、高温環境での部品素材や半導体分野の基板、さらには宇宙開発など極限環境での活用に多大な期待を抱かせるものです。
炭素という身近な元素が、結晶構造を変えるだけでここまで大きく性質を変えるという事実は、素材科学の奥深さを改めて示唆しています。
今後の研究次第では、この六方晶ダイヤモンドがハイスペック材料としてさまざまな分野に浸透していく可能性があるでしょう。