新たに開発された「六方晶ダイヤモンド」の概要

一般に「ダイヤモンド」と聞くと、立方晶(キュービック)の結晶構造を思い浮かべる人がほとんどかもしれません。
しかし、炭素がつくる結晶構造のなかには、六角形をベースにした「六方晶ダイヤモンド(ヘキサゴナルダイヤモンド)」と呼ばれる別種の形態も存在します。
六方晶ダイヤモンドは、1960年代に隕石衝突跡から極めて微量に発見され、「ロンズデーライト(lonsdaleite)」として学術的に報告されて以来、その存在意義が取り沙汰されてきました。
理論的には、立方晶ダイヤモンドよりもさらに高い硬度を持つ可能性が示唆されていたものの、これまで入手できる試料はごく小さく不純物も多かったため、実験による確認が困難だったのです。
ところが近年、中国の複数の研究機関を中心とするチームが、グラファイト(黒鉛)を高圧・高温下に置き、約1,800K(摂氏1,500度以上)まで加熱することで、この六方晶ダイヤモンドを人工的に合成することに成功しました。
これまでの挑戦では、“大きさ”と“純度”の壁に阻まれ、実用を見据えた量産化への道は遠いと考えられていました。
しかし今回、ミリメートルサイズかつ高い結晶純度を達成し、理論として語られるだけだった六方晶ダイヤモンドの特性をより正確に評価できる段階まで研究が進歩したのです。
合成のポイントは、従来の実験が想定していた条件よりもさらに強い圧力をかける点にあります。
そうすることで、黒鉛が「ポストグラファイト相」と呼ばれる特別な状態を経由し、より安定した六方晶構造へと変化しやすくなるのだといいます。
研究グループはこの手法を詳細に分析し、六方晶ダイヤモンドがいかに生成されるかを分子レベルで確認するとともに、大量生産に向けたスケールアップの可能性も示唆しました。
これらの成果は、六方晶ダイヤモンドがもはや“稀少な理論上の物質”にとどまらず、実際に新素材として活用しうる未来が見え始めたことを意味しています。